第二次世界大戦末期。エーデルヴァイス海賊団を名乗る組織がドイツ各地に発生していた。ヒトラー・ユーゲントに対抗するが、リーダー不在。それぞれが勝手に動いていた。父を処刑された少年ヴェルナーは、美しいハーモニカの音色に魅せられ、奏でていた少女エルフリーデ、地域の大工場の息子レオンハルトの二人から、このグループに誘われる。「いっしょに遊ぼう」と。さらに爆弾オタクの少年ドクトルが加わり、市内に敷設させた線路の不自然さから終点を見に行くワンダーフォーゲルのミニ旅行を行う。そこで見たのは、非情なユダヤ人の強制収容所。墜落の途中で廃棄された爆弾を使い、強制収容所輸送ルートの爆破を画策する。だが、紛れ込んできたチビのフランツは、生まれた時からの愛国教育とヴェルナーたちへの憧れで、頭の中が混乱していて、みんなを危機にさらす。目の前にある不都合な真実から目をそむける街の人々。わかりやすい物語へと書き換えようとする大人たち。複雑な自分たちの複雑さを抱え、自由に、そして自分がしたいことをしたいと願う海賊団。第二次世界大戦の記憶が消えようとしている現在を枠として使うことで、歴史を単純化させず、人々の思いもまたそのまま受け止めようとする意志を感じる。物語化を拒否する物語というテーマがお面白い。