- 作者: フランシス・ホジソンバーネット,Frances Hodgson Burnett,谷村まち子
- 出版社/メーカー: 偕成社
- 発売日: 1985/07/30
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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漢字使いが他の訳に比べてとても少ない。「かんがえごと」からしてひらがな。
この点は挿絵が比較的「かわいらしい」系統のものであることと、上下巻で一冊が薄く、字が大きいということと併せて、手に取られやすい要因になっている。
実際、小公女の中ではこのバージョンはよく動いている方だと思う。
"What were you thinking?" demanded Miss Minchin. "How dare you think? What were you thinking?"
に対して、「なにをかんがえていたんです?かんがえるなんて、女中のぶんざいであつかましい!いったいなにをかんがえていたんだね?」とは、原文からだいぶ補われている。このへんは意識的だとは思われるが。
そして、このバージョンでは「公女さま」を採用。
「かんがえごとをしていました。」
とセーラはこたえた。
「すぐわたしにあやまりなさい。」
とミンチン先生がいった。
セーラはちょっとためらってからいった。
「わらったのがぶさほうでしたら、まことにすみませんでした。でも、かんがえていたからってあやまるわけにはいきません。」
「なにをかんがえていたんです?かんがえるなんて、女中のぶんざいであつかましい!いったいなにをかんがえていたんだね?」
とミンチン先生がたずねた。
略
「わたくしは…先生はご自分のなさったことが、おわかりいならないのだとかんがえておりました。」
セーラはどうどうと、しかもていちょうにこたえた。
「わたしが自分のしたことがわからないって?」
ミンチン先生はあえぎながらいった。
「そうです。それから、もしわたくしが公女さまで、そのわたくしの耳を先生がぶったとしたらどうなるか…わたくしがどうするだろうか、ということをかんがえていました。それから、もしわたくしが公女さまであったら、わたくしがどんなことをいったりしたりしても、先生はけしてあんなことをなさらなかっただろうと。それからまだかんがえていました。もしとつぜんほんとうのことがわかったら、先生はどんなにびっくりされるだろうと…。」
とセーラがいった。
セーラは自分の空想をすっかり信じこんでしまっていたので、そのいい方にはミンチン先生でさえも不安を感じるような調子があった。そのしゅんかん、心のせまい想像力のよわいミンチン先生は、この強気な子どもにはなにかかくされた力があるのではないか、とおもったほどである。
「なんのことです?なにがわかったらです?」
と先生はさけんだ。
「わたくしがほんとうに公女さまであって、そしてなんでも…なんでもおもいどおりにできるとしたら。」
とセーラがいった。