児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

Chock Full o’ Fun

 

 

1968年のアメリカで、かこさとしさんの手作りおもちゃと遊びの絵本が出版されていました。その復刻版が日本語版とともに日本で初出版。

紹介される遊びは、日本の昔ながらの遊びを中心に身近な材料で作れるものばかり。かぶとの折り紙や手で持って遊べるこいのぼり、松葉のおすもうさん。ショウブの草笛には、ショウブ湯の説明があり、日本文化の紹介も。みかんの皮で作るタコがはちまきをしており解説がつく。「日本では重労働する時に、髪の毛や汗が目に入らないように頭に巻く」日本人にもなるほど!です。かこさとしさんの図解で想像しながら作れば英語の勉強にもなりそう。ショウブはsweet flag、人差し指はindex fingerとか。

タイトルの「Chock Full o’ Fun」は「楽しいことがいっぱい詰まっている」の意。28の遊びを収録します。 (は)

ジャングル・ブック

 

トラに追われているところをオオカミに助けられた人間の子。モウグリ(カエルの子)と呼ばれ、ヒグマのバルーや黒ヒョウのバギーラのうしろ盾でオオカミ一族に迎えられ、ジャングルの掟を身につけていく。オオカミの兄弟やほかの動物たちと冒険、闘いを数々ともにし青年へ成長する一方、モウグリは母親への思慕も断ち切れない。そして最後は人間のところへ帰ってゆくのだ。
全編を通して月の描写が印象的。ジャングルの夜を照らし影をつくる月の光。満月の夜に開かれるオオカミ一族の集会。そして動物たちは月の満ち欠けで時の流れを考える。昼よりも夜、人間よりも動物たちが生き生きとする世界。ゆえに、人間には人間の道と悟っているジャングルの仲間たちのいさぎよさが胸にくる。
原書のうちモウグリが登場する8編を収める。「福音館古典童話」シリーズの木島始訳は訳語がやわらかく、また時系列に配慮して最初の1編を2つに分け理解しやすくしているので、高学年にも。 (は)

ふしぎな月

 

空にのぼったまあるいふしぎな月。月が光をなげかけると、草かげの虫は妖精になっておどり出し、土の下で眠っていた種はあっというまに花ひらき、海の魚たちは夜空にのぼって泳ぐ。月はサバンナにもジャングルにも、そして戦場にものぼり、この世の喜びや悲しみをながめる。「ずっと そこから てらしておくれ。このよが やみに しずまぬように。わたしが やみに のまれぬように。月よ、月。ふしぎな月。」

この詩的な世界は高学年から。中学生に読み聞かせもいいかもしれません。 (は)

だるまちゃんの思い出 遊びの四季 ふるさとの伝承遊戯考

 

子どもの頃、全身全霊をかけて遊んだふるさと福井での思い出を、春夏秋冬に章立ててつづる。自然の草花や虫だけでなく、剪定された庭木の枝や自転車の車輪などの廃材もかっこうの遊び道具となった。いい材料を手に入れるための交渉術。上手に細工する先輩への羨望と尊敬。大人の見当ちがいな思いやりや戦争の虚偽を見抜いて、時流をよんで遊びをくり広げた子どもたち。そして、スキンシップが重要などと言われるまでもなく子どもたちはずっと、指や足、体をからめておもしろ楽しく遊んできたこと。

「のびてゆく子ども達が一番ほしいものは精巧さより自由」「与えられるものより自分の意のままになるもの」。「親や商人」の「満足」ではない。大人は子どもの姿に学んで、すべきことをしないとですね。  (は)

地球以外に生命を宿す天体はあるのだろうか?

 

 

第1章天文学の歴史、第2章太陽系内に生命を探す、第3章太陽系外に生命を探す。第1章でまず、地球は決して特別な存在、奇跡の星ではなく、無数にある星のうちの1つ「非常にありふれた存在」であること。第2章で、地球が生命を宿す最大の要因、海(液体の水)が火星のほか木星土星の衛星にもあった(ある)と考えられる証拠。特に火星の1999年と2005年の写真で地形の変化が見られ、地下水の噴出かもしれないこと。第3章で、地球型惑星の発見を飛躍的に増やしたケプラー宇宙望遠鏡の功績など、生命体の存在を確信させるような発見を積み重ねたうえで、最終的に読者への宿題として、地球外生命体の存在への疑問を投げかけて終わる。

講座の話を聴いているようなやわらかく順序だった文章が、専門的な内容にも引きこませる。発展途上のどんどん進化していく分野の専門家から新しい視点をもらい、世界が開かれる。中学生の進路さがしにもよさそう。 (は)

月とアポロとマーガレット

 

1969年人類初の月着陸成功には、あるプログラマーの存在が大きかった。マーガレット・ハミルトン。算数と宇宙が大好きな子ども時代から、長じてコンピューターのプログラミングを独学で習得。NASAアメリカ航空宇宙局)のプロジェクトに手を挙げ、アポロ計画を成功に導いた。実は当時、月着陸の直前にコンピュータートラブルが起きたが、マーガレットがあらゆる問題を想定してあらかじめ入力しておいたコードのおかげで危機を回避できた。訳者は同時通訳者として、この時の衛星中継に関わった。同じ女性としてそこに至るまでに困難があったであろうこと、どんな子も自分の可能性を存分に伸ばせる社会へとの願いを、あとがきに記しています。 (は)

おじいちゃんとの最後の旅

 

スタルク最後の作品。スタルクの愛読者ならすぐわかる、著者自身でもある策略家の男の子ウルフと、冷静でちょっとウルフとはそりがあわない歯医者のパパ。でもウルフはおじいちゃんが大好き。入院していてろくに動けないおじいちゃんを年上の友人アダムの助けをかりて病院からこっそり連れ出した。おじいちゃんは死んだおばあちゃんと暮らしていた家に行きたかったんだ。おじいちゃんは、おばあちゃんが最後に作ったジャムを持ち帰り、少しづつそれを食べながら最後に向かおうとしている。口汚くて、乱暴だったおじいちゃんが徐々に元気をなくしていき、最後に別れを告げることになる。おじいちゃんとの思い出を描いた作品と言えると同時に、自分の死に向かい合った作品かもと思わず考えたりもしてしまう。さいご、おじいちゃんが大好きなおばあちゃんと肩を寄せ合うイラストで終わっているのがとてもいい。