児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

バオバブのきのうえでーアフリカ・マリの昔話

 

昔、ジョレの村に、災いをもたらす不吉な子だとして、森に捨てられた男の子がいた。男の子は森の動物たちに育てられるが、ある日、自分の出自を知ると、バオバブの木にのぼり、歌を歌うようになった。「ジョレの畑に雨ふるな」と村を恨みながら。

食べ物に困るようになった村人たち。ある日、森へ入った狩人が男の子を見かけ、王さまに伝える。村人たちはバオバブの木の下から、男の子に呼びかけてみるも、下りてこない。同じくらいの子どもに行かせてはと上らせてみると、男の子はようやく木から下り、そのとたん、ジョレの村に雨が降り出した。

そのときから、ジョレの村では子どもを捨てることはしなくなり、そして王が亡くなると、その男の子が次の王になった。新しい王は、森で教わった深い知恵で国を治めたのだった。

アフリカ・マリの伝統的な語り部「ジェリ」による昔話を再話。力強いタッチのペン画に、アフリカの大地を思わせる茶色をところどころ配した挿絵。 (は)

おしゃれがしたいビントゥ

 

まだ髪が短くて小さなおだんごにしかできないビントゥ。大人の女の人たちが、三つ編みにして貝がらやビーズを飾っているのがうらやましい。

「どうして小さい子は三つ編みにしちゃいけないの?」と聞くと、おばあちゃんは答える。「小さいうちは友だちを作ったり勉強したりするのが大事。おおきくなったら精いっぱいおしゃれをしたらいいさ」。その夜ビントゥは夢を見た。16歳になったビントゥは、金色のコインがきらきら輝く三つ編みがすてき。でも目覚めると、さえない今の自分。

そんなある日、ビントゥは、海辺で転覆しているカヌーを見つけ大急ぎで大人たちに知らせる。男の子たちを助けたごほうびに、おばあちゃんがくれた素敵な髪飾り。つやつやの黒髪に、青や黄色の小鳥が飾られた自分の姿に、ビントゥは大満足しました!

西アフリカ・セネガルにルーツをもつ作者。手のこんだ髪型や、鮮やかで大胆な柄のファッションを描いた挿し絵も美しい。 (は)

黄金のファラオ

 

エジプト、王墓の谷発掘の物語を、フィクションとノンフィクションでおもしろく。

第一部が創作。3千年以上前の王墓荒らしの顛末。黄金の宝の眠る場所へ壁から壁を破って進むスリル、どろぼう一味の仲間割れ、影で操る人物と権力の存在(墓どろぼうが入る夜に限って警備がゆるいとか・・・)。
第二部。ロゼッタ石を掘り起こすわくわくする瞬間。花枠に囲まれた王の名をヒントに聖刻文字(ヒエログリフ)の解読に成功した若き言語学者。ピラミッドは王墓だという発見。その建築年代を特定したエジプト学者の功績。

そして第三部。ツタンカーメンの墓の発見のために、15年の月日を費やし念願成就した考古学者と、資金面で支えた伯爵らの発掘ドキュメントが、第一部の空想話とリンクしておもしろい。

口絵カラー写真もあるが、本文モノクロ写真からも、王の棺の黄金の輝きとその造形美が伝わって貴重。 (は)

きんいろのとき

 

夏のおわり、きりぎりすが鳴き始める。「きりきり きりかり」。

畑の小麦は黄金色に実り、刈りとり機の音が「ちゃぐちゃぐ かたかた」。

森では、木の実を集めるりすたち。落ち葉を踏みならしながら家へ帰る、学校の子どもたち。

澄み渡る空を、南へ飛んでゆく渡り鳥のなき声。

やがて、霜がおり、木々の葉もみな散ってしまうと、農夫たちはあたたかいうちの中で、にぎやかに、感謝祭を祝うのです。
実りの秋の喜びが、詩のような静かな文章と、目の覚めるような黄赤青の色彩で表現されています。 (は)

終点のあの子

 

2008年の著者のデビュー作。ミッションスクールの高等部に新しく入ってきた朱里は、有名カメラマンを父に持ち、自由奔放。まわりの空気を読まず、自然に振る舞い、美術の授業では明らかな才能をみせるなどまわりをざわめかせる。まじめな希代子は、朱里に魅せられるが、あまりに振り回す朱里になんとか反省させたいという思いに駆られ、朱里を孤立させる作戦を建て、成功するのだが、結局自滅するような形になってしまう。このクラスを舞台として、やはりまじめな奈津子がひと夏の冒険として市民プールのアルバイトにチャレンジして男の子や、お掃除の叔母さんと出会う中でいりいろ考える「甘夏」。クラスで一番の美しさを誇る恭子が、夏休みに偶然のことからカースト最下位のオタクの保田と交流することになり、安らぎを得るのに結局は離れることになる「ふたりでいるのに無言で読書」。そして、あのみんなを翻弄した朱里のその後「オイスターベイビー」は、大学卒業まじかで、それまで感じなかった壁に突き当たる朱里の姿がみられる。どの作品も、登場する少女たちの切実な思いを感じ、目が離せなくなる!

ウタカイ 異能短歌遊戯

 

昨日に続き、短歌モノ。

自らの歌の力で歌垣を出現させ、精神の世界で戦う「歌会」。登尾伊勢は『紅龍の登り口』と言われる、燃え上がる竜を出現させて相手を攻める戦法の名手だ。『幽玄の歌使い』と言われる朝良貴鏡霞にあこがれて、短歌の名門歌聖学園に進学。そして、恋も短歌も妥協しない。全国制覇に向い戦い続ける! といういかにもアニメにしたら映えそうなお話。『短歌部、ただいま部員募集中!』で、私はこういう展開を期待していたかも・・・。全体的に先輩との恋愛を含めベタな展開ところがイマイチだけど、こういうところから短歌に興味を持つ子もいる? とはいえ、作品中の短歌は、だいぶ振り切っています。ハイ・・・

短歌部、ただいま部員募集中!

 

タイトルのワクワク感に比べると、内容がオーソドックスで、結局短歌の本かぁ(当然と言えば当然なのだが)と思わされた。読者想定はまじめな優等生? ちょっと混乱したのは、著者が複数(男女)だが、どちらが書いているのかが、文末に( )で記してあるけど、読んでいるときにわかりにくく、なおちゃんの家のねこタマスケというキャラも出てくるけど、タマスケはなぜ登場?というのもよくわからなかった。すでに短歌に興味がある子には、投稿先などの案内もあり良いとおもうのだが、ぐいぐい短歌の世界に引っ張っていってくれるようなインパクトがちょっと弱いように思う。