児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100

 

短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100

短歌研究ジュニア はじめて出会う短歌100

  • 発売日: 2020/08/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

月刊誌「短歌研究」の付録として小中学生向けに刊行されたものを1冊にまとめた。古典(奈良時代)から現代(なんと最も新しいのは令和!)までの歌を、歌謡や琉歌なども含め幅広く扱う。時代順ではなく、恋人や家族を思う、四季を詠む、時代や社会への思い、自分を深く見つめたものなど8つのテーマごとにランダムに並べ、歌を詠む人の心は昔も今も変わらないことを実感する。1首ごとに出典、歌の意味、作者紹介を端的に収め、イラストや、いぬ、ねこ、ロボットのキャラクターによる親しみやすいコメントを添えるページづくりや、気楽に自分の今の言葉でつくってみようと呼びかけるコラム、短歌作品を4コマ漫画に表現した「コミ歌」など、小中学生でも作ってみたい気にさせる。私は、初めて読んだ在日コリアン2世の歌にはっとさせられました。(は) 

蘇乱鬼と12の戦士

 

蘇乱鬼と12の戦士 (童心社・新創作シリーズ)

蘇乱鬼と12の戦士 (童心社・新創作シリーズ)

 

真砂留がものごころついて以来初めておとずれた父の故郷は、千年の昔からの言い伝えを守り続ける山伏の里だった。だが今、伝統が破られ守りが解かれ、悪の化身蘇乱鬼がよみがえろうとしていた。本格ファンタジーを目指した作品で、弱い部分も多いが、しっかり書き込んであるところは評価できる。 

竜と舞姫

 

竜と舞姫

竜と舞姫

 

 遣唐使の従者として唐に渡った14歳の小麻呂には野心があった。それは、唐の進んだ医学を身に着け故国で出世すること。だが安禄山事件直後の唐では混乱が続き、小麻呂の夢は断たれる。しかし共に帰国した遣唐使藤原清河の娘喜娘(きじょう)との出会いが、小麻呂の希望となる。とはいえ今をときめく藤原氏の娘と下級役人小麻呂のつながりが続くはずもなく、身分がない小役人に出世は望むべくもない。自分の生きる道を見失った小麻呂であったが、出世ではなく自分とおなじ庶民のために喜娘と共に生きる決意をする。全体の感覚が、平安時代というより現在風なのが気になる作品でした。

けちんぼおおかみ

 

ある日おおかみが、海辺にうちあげられたクジラを見つけた。たらふく食べたうえに肉をくわえて山に帰る途中、人間の村を通りかかると小さな兄弟が肉をねだってきた。でも、おおかみはしらんぷり。すると子どもたちは怒ってどなった。おまえはみぞれにうたれて、ぶったおれて土をかぶりそこに木が生え、鳥やけものが来てふんをたれておしまいになるぞ、と。それでも知らん顔で山へと向かうが、林に来かかった時、おおかみの口から子どもたちの恨みの言葉が次々飛び出し、その通りのことが起こる。とうとう動けなくなってしまったおおかみは、仲間が来るたびに欲ばりはいけないと言い聞かす。おおかみをこんな目に合わせた小さな兄弟は、実はアイヌの国つくりの神の子だったのでした。
北海道石狩に伝わるアイヌユーカラが原話で、見返しに描かれた民族衣装が美しくそれを伝えます。神沢利子文、赤羽末吉絵の「日本のむかし話」シリーズ。 (は)

 

いそっぷのおはなし

 

いそっぷのおはなし

いそっぷのおはなし

 

 「きつねとつる」「うさぎとかめ」などよく知られるイソップ寓話を9編収める。「よくばりないぬ」の憎々しげな顔つきが一転、肉を落としてしまった時の表情に笑わずにいられない。その瞬間の場面に文章のないことが効果的です。「ひつじかいとおおかみ」のオオカミの迫力!表紙のキツネもかなりですが、降矢ななさんのオオカミ、絶品です。「きこりとおの」で池から現れるこんな神さま見たことない!最初の「きつねとつる」に出てきたキツネが、水玉模様のファンシーな服で最後も笑わせてくれます。このニヤリとした笑いは4年生くらいから。  (P)

デイビッド・マックチーバーと29ひきの犬

 

 新しい町にひっこしてきたばかりのデイビッドは、自分のことを知っている人が誰もいないのが残念です。ところが、お母さんに頼まれてスーパーに行った帰り道。紙袋が濡れて破れ、気が付かないうちにお肉の包みが落ちていました。3つ目の包みが落ちた時にやっと気づいたデイビッドは、あわてて引き返しますが、お肉には犬が群がっていてデイビッドの後をついてきました。スーパーまで戻ってお肉を買いなおしますが29匹にもなった犬がついてきます。見ている人たちは犬のパレードだと大喜び、ブラスバンドも加わり、みんなはデイビッド・マックチーバーと29匹の犬のパレードだと大喜び。でも一匹の黒猫が飛び出してきて犬たちが追いかけ、みんなバラバラになって、パレードは終了。でもデイビッドはすっかり町のみんなに声をかけられるようになって大満足! どんどんパレードが大きくなっていってどうなるのかしら、と思ったら無事に解決。デイビッドの気持ちになって満足して読めます。

超能力篇 SFショートストーリー傑作セレクション

 

 『超能力』星新一は、ある日突然ニュースで不正を暴いてしまったアナウンサーの運命。『予知の悲しみ』小松左京は24時間先までの未来だけ予知できる男。『影』続木道夫は、突然逆向きに影が現れるようになってしまった男。『赤ん暴君』平井和正は、生まれた弟が、すさまじい力で周りを思い通りにしてしまう力を持っていることに気づいた兄。『闇につげる声』筒井康隆は、それぞれ違った力をもつエスパーたちが、誘拐された仲間の救出を図る物語。一番意外性があるのは『影』かも。また、筒井康隆の初期作がちょっと初々しいのにもびっくり。いずれも楽しく読める。