児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

絵本よもやま話

 

国際アンデルセン賞画家、赤羽末吉によるエッセイ集で、自身が解説する制作話が15作品も含まれる。

「樹下美人」図から感じ取った「深く高く強くやさしく」を目標とする制作姿勢、子どもの絵本に対する真剣さは、たとえば瀬名恵子さんと交わした「絵本のオバケ」論の、「こわくないオバケはアンのないモナカ」という言葉に見えます。「恐怖を知るということは、健康でそれだけ心が豊かなのであ」り、あいまいに隠す配慮は「子どもをみくびった」態度だと、戒められます。

一方、満州からの引き揚げをつづった「戦火のなかで」からは、戦中戦後を生き延びたことの壮絶を知りますが、全編にわたる江戸っ子口調とユーモアや、好んで使われる「おおどかな美しさ」といった表現に、人柄がにじみます。 (は)