児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

児童研究書

少女小説から世界が見える ペリーヌはなぜ英語が話せたか

少女小説から世界が見える 作者:川端 有子 河出書房新社 Amazon 少女小説を歴史の中で読み解いているが、わかりやすくて説得力がある。「若草物語」は、とかくジョーが取り上げられるけれども、ジョーだけでなく4姉妹の関係性への言及が面白かった。ジョー…

絵本戦争 禁書されるアメリカの未来

絵本戦争 禁書されるアメリカの未来 作者:堂本 かおる 太田出版 Amazon 衝撃的なタイトルです。禁書と言っても、州や学区ごとに行われているもので、アメリカでは、禁書推進派に対抗する組織的な活動(ペン・アメリカやアメリカ図書館協会)がちゃんと存在す…

あいたくて ききたくて 旅にでる

あいたくて ききたくて 旅にでる 作者:小野和子,志賀理江子,濱口竜介,瀬尾夏美 PUMPQUAKES Amazon 1934年生まれの著者小野和子が、35歳の時に我流で始めた「民話の聞き書き」。そのうち18の「民話探訪」にまつわるエッセイと、聞かせてもらった民話をおさめ…

翻訳する女たち

翻訳する女たち:中村妙子・深町眞理子・小尾芙佐・松岡享子 作者:大橋 由香子 エトセトラブックス Amazon 光文社古典新訳文庫ウェブサイトにて2017~2018年連載の「不実な美女たち」を書籍化。 やはり私は、松岡享子さんの章をおもしろく読みました。高校編…

わたしのなかの子ども

わたしのなかの子ども (福音館の単行本) 作者:シビル・ウェッタシンハ 福音館書店 Amazon スリランカの絵本作家シビル・ウェッタシンハさんが語る子ども時代。 これを読むと、母親やおばから昔話や民謡をたくさん聴いたことが、絵本作品の踊るような線や歌に…

イギリスの忘れられた子供の本

イギリスの忘れられた子供の本 作者:鶴見良次 朝日出版社 Amazon その時代に大いに読まれたが、今では評価され素、後世には残らなかった児童文学を取り上げている。最初の子ども向きの本としては聖書が取り上げられている。この後もそうだが、子どもの本のベ…

石井桃子の日本昔話

石井桃子の日本昔話――『ふしぎなたいこ』と『おそばのくきはなぜあかい』 作者:杉山きく子,松岡享子,下澤いづみ,内藤直子,加藤節子,甲斐智子 「がんばれ!東京子ども図書館」の会 Amazon 『ふしぎなたいこ』『おそばのくきはなぜあかい』という石井桃子が再話…

絵本よもやま話

絵本よもやま話 作者:赤羽 末吉 偕成社 Amazon 国際アンデルセン賞画家、赤羽末吉によるエッセイ集で、自身が解説する制作話が15作品も含まれる。 「樹下美人」図から感じ取った「深く高く強くやさしく」を目標とする制作姿勢、子どもの絵本に対する真剣さは…

3000万語の格差

3000万語の格差——赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ 作者:ダナ・サスキンド 明石書店 Amazon 著者は、アメリカの小児人工内耳外科医。声や音が聞こえるようになっても、話せない、言葉が理解できない事例に接し、追跡研究を思い立ち、人は3歳まで…

「100まんびきのねこ」たちはどこから生まれ、どこへいったの

「100まんびきのねこ」たちはどこから生まれどこへいったの 作者:村中李衣 ブック・グローブ社 Amazon 「100まんびきのねこ」の作者ワンダの評伝。長女として、両親が早く亡くなったのち、家計を支えるために苦労した事。だが、同時に固いきずなの兄弟たち。…

シンデレラはどこへいったのか—少女小説と『ジェイン・エア』

シンデレラはどこへ行ったのか 少女小説と『ジェイン・エア』 (岩波新書 新赤版 1989) 作者:廣野 由美子 岩波書店 Amazon 虐げられているが心優しく美しい少女が王子さまと出会うシンデレラ。このシンデレラとは違う道筋をたどって幸せをつかむ女性の物語『…

赤ちゃんとわらべうた―続 乳幼児おはなし会とわらべうた

落合美知子/編著 児童図書館研究会/発行 2023年7月 前書「乳幼児おはなし会とわらべうた」から、赤ちゃん(0~2歳前後)向けにしぼって、エッセンスをまとめた。 表から読むわらべうたの歴史、個人の体験記録、裏から読む実践編と資料編(わらべうたの楽譜…

乳幼児おはなし会とわらべうた

乳幼児おはなし会とわらべうた 児童図書館研究会 Amazon わらべうたが、なぜ子どもの成長に必要か。 わらべうたが、子育てへ、子どもと子どもに関わる人たちへ与えるよい影響。 長年、わらべうたの会や講座を行ってきた落合美知子さん。多くの親子と触れ合っ…

伝説の編集者ノードストロムの手紙―アメリカ児童書の舞台裏

伝説の編集者ノードストロムの手紙––アメリカ児童書の舞台裏 作者:レナード.S.マーカス 偕成社 Amazon 1940年~1973年、アメリカのハーパー社の児童書部門を統括したアーシュラ・ノードストロムが、作家や画家、読者などに宛てた手紙263通を収める。 本書を…

音楽の根源にあるもの

音楽の根源にあるもの (平凡社ライブラリー) 作者:文夫, 小泉 平凡社 Amazon 1963~1977年に雑誌掲載された論文や講演、対談をまとめたもの。『子どもの遊びとうた』に比べて、わらべうたや民謡についてリズム、音階の分析がさらに専門的で難解でした。 1番…

子どもの遊びとうた―わらべうたは生きている

子どもの遊びとうた 作者:小泉 文夫 草思社 Amazon 1983年の小泉文夫氏の急逝後、わらべうたについての文章をまとたもの。1冊を通して論が展開されているわけではないのと、音楽理論などが難しく読みづらかった。 雅楽や能は一部の階級の文化であって、真に…

父の話をしましょうか~加古さんと松居さん

子ども・社会を考えるシリーズ 父の話をしましょうか~加古さんと松居さん~ 鈴木万里・小風さち 作者:鈴木万里,小風さち,NPOブックスタート ブックスタート Amazon 加古里子の長女万里と松居直の長女さちの対談。絵本作家加古里子が生まれた背景がよくわか…

アイヌ神謡集

アイヌ神謡集 (岩波文庫) 作者:知里 幸惠 岩波書店 Amazon 口承文芸であるアイヌ神謡(ユーカラ)を文字に書き起こし、アイヌ語と和訳をぴたり並べ対応させて著した貴重な書。知里幸恵が選んだ13篇を収める。 アイヌは、山川や動植物、雷などの自然現象、人…

ピリカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』

ピリカ チカッポ(美しい鳥) 知里幸恵と『アイヌ神謡集』 作者:石村 博子 岩波書店 Amazon 知里幸恵は、19歳で『アイヌ神謡集』を著し亡くなったが、神謡を”謡えて書ける”人だったことが、かけがえのない才能だったことがわかる。 本書は、幸恵にユカラ(神謡…

<読む>という冒険 イギリス児童文学の森へ

〈読む〉という冒険 イギリス児童文学の森へ (岩波ジュニア新書 947) 作者:佐藤 和哉 岩波書店 Amazon 「マザー・グース」「ロビンソン・クルーソー」「クリスマス・キャロル」「不思議の国のアリス」「クマのプーさん」「ライオンと魔女」「第九軍団のワシ…

「かいじゅうたち」の世界へ

「かいじゅうたち」の世界へ―モーリス・センダック (名作を生んだ作家の伝記) 作者:ハル マルコヴィッツ 文溪堂 Amazon この本は伝記シリーズとなっているが、センダックの作品が社会に与えた影響についても触れら、作品論の性格も強い。それが意外な内容を…

子どもに定番絵本の読み聞かせをー選書眼を育てる60冊の絵本リストー

『子どもに定番絵本の読み聞かせをー選書眼を育てる60冊の絵本リストー』 尾野三千代/著 児童図書館研究会/発行 2021年8月15日 定番絵本とは、「長く読み継がれてきた絵本」のこと。そして、「子どもにとって成長の糧となり、生涯忘れえぬ喜びをもたらす絵…

桃太郎の運命

桃太郎の運命 作者:鳥越 信 ミネルヴァ書房 Amazon 昔話としては比較的新しい「桃太郎」。日本人で知らぬ人はいないと思われるこの主人公は、様々にくり返しパロディ化されてきた。つまり、「政治的・社会的・文化的な変化」を背景にした設定で、時代の要請…

昔話の扉をひらこう

昔話の扉をひらこう 作者:小澤 俊夫 暮しの手帖社 Amazon 著者は、昔話研究を一筋に70年以上。昔話は子どもの成長を助ける、だから身近な人の声でぜひ語ってあげてください、と一貫して伝えてきた。その理由は、昔話のもつ特徴にあるということを、易しく解…

言葉の力 人間の力

言葉の力 人間の力 作者:中村 桂子,舘野 泉,松居 直,加古 里子 佼成出版社 Amazon 異分野、2世代の4人がリレーする5つの対談を収める。 1926年生まれの松居直氏と加古里子氏に共通するのは、日本のアジア侵略に対する償いと、戦争に生き残った自分はどう…

日本の絵本 100年100人100冊

日本の絵本 100年100人100冊 作者:広松 由希子 玉川大学出版部 Amazon 日本の絵本について、1912年から2014年の約100年間に出版されたものを1作家につき1作品、100冊を紹介する。冒頭の杉浦非水『アヒルトニワトリ』から、それにつづく大正から戦後まもな…

世界の児童文学をめぐる旅

世界の児童文学をめぐる旅 作者:池田 正孝 エクスナレッジ Amazon 児童文学の名作のなかでも、26の作品・シリーズ・作家について、その舞台やゆかりの地を訪ね、写真とともに物語世界や作家の人生を紹介する。 英国を舞台にした作品には、「リアルな舞台や場…

クヌギ林の妖怪たち 童話作家・富安陽子の世界

クヌギ林の妖怪たち ー童話作家・富安陽子の世界ー 作者:斉藤洋 講談社 Amazon 斉藤洋が、富安陽子が日本児童文学新人賞を受賞した『クヌギ林のザワザワ荘』を読み解き、さらに富安陽子と対談をしている。自分も児童文学作家だけに、評論というより世界の作…

えほんのせかい こどものせかい

えほんのせかい こどものせかい (文春文庫) 作者:享子, 松岡 文藝春秋 Amazon 「幼いうちに本の楽しみを知ること」、それには「まわりにいるおとなが本を読んでやること」。 50年の間、子どものためにいいと松岡享子さんが考え、やってきたこと。50年たって…

絵本の記憶、子どもの気持ち

絵本の記憶、子どもの気持ち (福音館の単行本) 作者:山口 雅子 株式会社 福音館書店 Amazon 「子どもはどうして絵本が好きなの?」「子どもにはどんな絵本がいいの?」という疑問に、大学生がレポートに綴った幼い頃の思い出と、著者が家庭文庫で見てきた子…