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ベルリン1945

 

ベルリン1945

ベルリン1945

 

 ヘレ、ハンスに続き、今回の主人公は、ヘレの娘エンネ12歳。敗戦間近の空襲が続くベルリンが舞台だ。両親が政治犯として捕えられ、祖父母を両親だと思って育ってきたエンネ。ただでさえ危険な中に、軍から逃亡してきたハインツ叔父が戻ってくる。かつてヒトラーユーゲントに夢中だった叔父は、戦争の現実の中で絶望していた。そして市街戦が始まる。侵攻してきたソ軍の前で、ナチから豹変する大人たち。ヘレはやっと釈放されるが、エンネは突然現れた父との間で戸惑う。ナチになっていた叔母のマルタは、夫が戦場で死に、ヘレの前に謝罪に現れる。だが兄弟といっても簡単には許しあえない。ナチが去ってもソ連スターリン独裁の現実が迫る。
誰もが迷いながら、よりよい道を求めようとしている。コルドン氏が、講演で、作家は、上から見下ろすのではなく、先を知らない登場人物たち同じ目線に立つことが大切であることを説いていたが、だからこそ、私たちは彼らに共感できるのだろう。