児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

中学生以上

音楽をお月さまに

音楽を お月さまに 作者:フィリップ・ステッド ぷねうま舎 Amazon ハリエットの両親は、娘がオーケストラでチェロを弾くこと望んでいました。でもハリエットは、ひとりで弾きたい。 ある晩、部屋でひとり静かに弾いていると、フクロウが鳴いてじゃまをします…

めぐりめぐる月

めぐりめぐる月 作者:シャロン クリーチ 偕成社 Amazon アメリカ先住民の血をひく13歳のサラは、家を出たきり戻らない母に会うため、祖父母とアメリカ横断の車旅に出た。旅の道すがら、祖父母に、親友フィービーと家族の出来事を話していくことは、自分自身…

続 あしながおじさん

続 あしながおじさん (偕成社文庫4061) 作者:ジーン ウェブスター 偕成社 Amazon 「あしながおじさん」でジュディーの親友だったサリーが、孤児院の院長になって改革に奮闘する日々を、サリーの手紙でつづる。 相手は、ジュディーのほか、政治家である婚約者…

13歳から考える住まいの権利

13歳から考える住まいの権利 作者:葛西 リサ かもがわ出版 Amazon 著者は、ひとり親、DV被害者、性的マイノリティの住生活問題、シェアハウスに関する研究が専門。「住まいは人権」という意味を、日本の住宅政策の歴史をたどりながら、社会的弱者の目線でか…

グレイス・イヤー

グレイス・イヤー 少女たちの聖域 作者:キム リゲット 早川書房 Amazon 16歳を迎えた少女たちは魔力を宿し、危険な存在になるため一年間街から追放される。森の奥のキャンプで魔力を解き放ち、清らかになるために。だが、このグレイス・イヤーについては決…

青いイルカの島

青いイルカの島 (理論社名作の森) 作者:スコット オデル 理論社 Amazon 1835年から1853年にかけてアメリか東海岸の近くの一人で島で暮らした少女の物語。島の周りに豊富にいるラッコを獲るためやってきたアリュート人とのトラブルで島の男たちが多く殺された…

ドアのむこうの国へのパスポート

ドアのむこうの国へのパスポート 作者:トンケ・ドラフト,リンデルト・クロムハウト,リンデ・ファース 岩波書店 Amazon 文字は大き目で読みやすいが、中身はギッシリなので読書力のある高学年から大人向け。主人公はラウレンゾー。(ドラフトさんのファンなら…

中学生の満州敗戦日記

中学生の満州敗戦日記 (岩波ジュニア新書) 作者:今井 和也 岩波書店 Amazon 設計の仕事をしたいた父が、ハルピン工大の教授として招かれ、1937年一家で満州に渡った。ぼくは、中学3年で日本の敗戦を迎える。もっとも過酷な開拓村の住民に比べれば、まだマシ…

焼け跡に風が吹く

焼け跡に風が吹く (福音館日曜日文庫) 作者:山福 康政 福音館書店 Amazon 1941年に小学校を卒業した主人公「ぼく」は、戦時下に生きることになる。家が貧しく進学が難しいが、成績が良かったことで、叔母の援助もあり進学。だが、上級生のしごきと勤労動員の…

チャンス はてしない戦争をのがれて

チャンス: はてしない戦争をのがれて 作者:ユリ・シュルヴィッツ 小学館 Amazon 『よあけ』などで知られる絵本作家の自伝。ポーランドに生まれたウリは、聖書に出てくる芸術家にちなんで名付けられ、両親の願い通り絵を描くのが大好きな男の子に育つ。だが、…

ザ・ディスプレイスト 難民作家18人の自分と家族の物語

ザ・ディスプレイスト 難民作家18人の自分と家族の物語 ポプラ社 Amazon トランプ大統領就任と、それに伴う移民排斥の中で編集されたという本。難民として転々とした経験の辛さだけではなく、祖国では楽しい経験もあったのに、悲劇の話だけを期待される辛…

パンに書かれた言葉

パンに書かれた言葉 作者:朽木 祥 小学館 Amazon イタリア人のママと日本人のパパを持つ私の名前は光・S・エレオノーラ。Sは、ある言葉の略。3.11の震災の後、本当は中学2年に上がる前のこの春休みに家族でイタリア旅行にいくはずだったのが、一人でイタリ…

プーさんの戦争 世界一有名なクマのお話

プーさんの戦争: 世界一有名なクマのお話 (評論社の児童図書館・文学の部屋) 作者:リンジー・マティック,ジョシュ・グリーンハット 評論社 Amazon カナダで、母熊が殺された後、男の子が育てようとしたクロクマの子は、いたずらすぎてすぐに手に負えなくなり…

真実の裏側

真実の裏側 作者:ビヴァリー ナイドゥー,Beverley Naidoo,もりうち すみこ めるくまーる Amazon 2001年カーネギー賞受賞作。ナイジェリアに住むシャデーとフェミの姉弟は、やさしい両親と共に幸せに暮らしていた。だが、ジャーナリストの父が反政府記事を書…

海底二万海里

海底二万海里 (福音館古典童話シリーズ) 作者:ジュール ヴェルヌ 株式会社 福音館書店 Amazon さまざまな海洋に出現する謎の怪物が、実は潜水艦ノーチラス号だったとわかるまでの導入が、すでに迫力ある物語で引きこまれる。 動力・熱・光のすべてを電気でま…

科学はこのままでいいのかな

科学はこのままでいいのかな ――進歩?いえ進化でしょ (ちくまQブックス) 作者:中村 桂子 筑摩書房 Amazon 私たちの「生き方」や「社会のあり方」を、哲学ではなく科学で考えてみよう、と呼びかける本書。 それには、まず、人間は自然の一部という「中から目…

わたしは大統領の奴隷だった

わたしは大統領の奴隷だった ワシントン家から逃げ出した奴隷の物語 作者:アームストロング・ダンバー,エリカ,ヴァン・クリーヴ,キャサリン 汐文社 Amazon ジョージ・ワシントンの家で彼の妻マーサのお気に入り奴隷だったオーナ。生まれた時から奴隷として暮…

人が作った川・荒川(2023課題図書中学生)

人がつくった川・荒川――水害からいのちを守り、暮らしを豊かにする 作者:長谷川 敦 (株)旬報社 Amazon 著者は河川の専門家ではなくフリーライター。異常気象で河川氾濫が多い中、歴史の中での治水の考え方の変化や河川利用をたどったもの。川筋が人工的に変…

スクラッチ(2023課題図書中学年)

スクラッチ 作者:歌代朔 あかね書房 Amazon 2020年4月に中学生3年になった千暁(かずあき)と鈴音(すずね)を中心に繰り広げられる春から秋の物語。つい最近経験したコロナ下の息苦しさが描かれた作品なので、今の中学生なら共感をもって読めるだろう。千…

フードバンクどろぼうをつかまえろ! (2023課題図書小学校中学年の部)

秘密の大作戦! フードバンクどろぼうをつかまえろ! 作者:オンジャリQ.ラウフ あすなろ書房 Amazon ネルソンも妹のアシェリーもいつもお腹をすかせてる。世界一すてきなかあさんは、看護婦として懸命に働いているけどお金が足りない。だけど、フードバンクに…

アップステージ (2023課題図書中学生の部)

アップステージ: シャイなわたしが舞台に立つまで 作者:ダイアナ・ハーモン・アシャー 評論社 Amazon シーラは、おとなしくて恥ずかしがり屋の女の子。親友のキャシーと、学校のミュージカルの参加を夢見ているけれど、同時に舞台に立つのは怖くてたまらない…

10代の憲法な毎日

10代の憲法な毎日 (岩波ジュニア新書) 作者:伊藤 真 岩波書店 Amazon 高校生が、学校や家庭、社会生活の中での悩みや問題、疑問を、弁護士の伊藤真さんに相談しながら、憲法や子どもの権利条約、民法などに定められる、権利や自由の考え方を学んでいく。会話…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon 1と同じく、著者の息子の感受性から発せられる言葉に、おとなが考え、学ぶことの多い1冊。 日本の台風災害を伝えるニュースで「東京の避難所からホームレスの人が追い…

グッゲンハイムの謎

グッゲンハイムの謎 作者:ロビン・スティーヴンス 東京創元社 Amazon テッドが、その先入観のない視点で謎を解くシリーズ2作目。ニューヨークに行ったサリムを訪ねたテッドと姉のカットとママの3人。ところが到着早々に、グッゲンハイム美術館で働くグロリ…

ロンドン・アイの謎

ロンドン・アイの謎 作者:シヴォーン・ダウド 東京創元社 Amazon 12歳のテッドは、他の子とはちょっと違うと言われている。自分では、どうちがうのかうまくわからない。たとえば嘘がつけないし、他の人の気持ちを理解するのも難しい。だから友だちもいない…

ダリウスは今日も生きづらい

ダリウスは今日も生きづらい 作者:アディーブ・コラーム 集英社 Amazon 高校2年のダリウスは、共感しずらい主人公だろう。確かにイラン出身の母とゲルマン系アメリカ人の父という出自のせいで差別的な扱いを受けることもあるが、つねにネガティブな感情から…

ハンナの夢さがし

ハンナの夢さがし 作者: ベッティーナ・オプレヒト,若松宣子 出版社/メーカー: 偕成社 発売日: 2015/10/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ハンナは10歳、14歳のヴァレリーお姉ちゃんは、ハンナと違って美人でほっそりしている。アイドルに…

目で見ることばで話をさせて

目で見ることばで話をさせて 作者:アン・クレア・レゾット 岩波書店 Amazon 11歳のメアリーは想像力が豊かな女の子だ。1805年アメリカのマーサ・ヴィンヤード島に住んでいたメアリーにとって、手話は当たり前のものだった。島ではろう者が多く、自分も父も耳…

ソロ沼ものがたり

ソロ沼のものがたり 作者:舘野 鴻 岩波書店 Amazon 文章だけでなく挿絵も著者。絵がとても魅力的。自然科学系の絵本を多く手がけている著者なので、内容は食物連鎖をモチーフにしたものが多い。その基礎知識がある子の方が読みやすく、ある意味、非情でもあ…

ウソつきとスパイ

ウソつきとスパイ (Sunnyside Books) 作者:レベッカ ステッド 小峰書店 Amazon 父さんが失業したせいで引っ越すことになったジョージ。運動は苦手だし、イケてないから、みんなにばかにされている。引っ越し先のマンションの地下ゴミ捨て場で、「今日は、ス…