児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

A特におすすめ

モノクロの街の夜明けに

モノクロの街の夜明けに 作者:ルータ・セペティス 岩波書店 Amazon 1989年のルーマニアはチャウシェクス独裁体制下にあった。食料は配給の列にならばなければ手に入らない、電力は不足気味で突然の停電もある。17歳のクリスチャンは、突然スパイになるように…

きりこについて

きりこについて (角川文庫) 作者:西 加奈子 KADOKAWA Amazon 極めつけのブスに生まれついたきりこは、両親から常にかわいいと言われ(美形の両親は本気でそう思っていた)、自分はかわいいと確信し、自信をもってまわりを巻き込む女の子として成長していった…

両手にトカレフ

イギリスで暮らす14歳のミアは飢えている。母親が生活保護費をドラッグに使ってしまい、食べ物を買えないのだ。なんとか弟のチャーリーに食べさせたいと思うと、自分の食事を抜くしかない。学校の給食は一定額まで無料だが、それでは飢えてしまう。こっそり…

ゼバスチアンからの電話

ゼバスチアンからの電話[新版] 作者:イリーナ コルシュノフ 白水社 Amazon 17歳のザビーネは、恋人のゼバスチアンとけんか別れしたまま、父が田舎に買った家に引っ越してきた。 学校へ通うのも何をするにも不便な土地で、一緒に化学の研究に取り組めそうな友…

乳幼児おはなし会とわらべうた

乳幼児おはなし会とわらべうた 児童図書館研究会 Amazon わらべうたが、なぜ子どもの成長に必要か。 わらべうたが、子育てへ、子どもと子どもに関わる人たちへ与えるよい影響。 長年、わらべうたの会や講座を行ってきた落合美知子さん。多くの親子と触れ合っ…

新幹線と車両基地

新幹線と車両基地 (乗り物ひみつルポ 1) 作者:モリナガ ヨウ あかね書房 Amazon 東京から博多へ走る新幹線のぞみを例に、その速さのひみつ、客車の特徴や乗務員室のようす、さらには、新幹線が工場で作られる過程や、車両基地で行われる定期検査を解説。「乗…

でんしゃ すきなのどーれ

でんしゃ すきなのどーれ (幼児絵本シリーズ) 作者:岡本 雄司 株式会社 福音館書店 Amazon 正面から見た「かお」、横から見た「かたち」、「いろ」、「むかしといま」など、電車をずらっと並べてみせて、「すきなのどーれ」とよびかける。 余計な背景のない…

雪は天からの手紙―中谷宇吉郎エッセイ集 ~立春に卵が立つ?!~

雪は天からの手紙: 中谷宇吉郎エッセイ集 (岩波少年文庫 555) 作者:中谷 宇吉郎 岩波書店 Amazon 石川県生まれ、雪や氷研究で名を遺した物理学者、中谷宇吉郎のエッセイ21編。 雪の結晶の表現は、さすが美しい。「枝の端々までが手の切れそうな輪廓」「その…

おじいちゃんのくるみのき

おじいちゃんの くるみの き (児童図書館・絵本の部屋) 作者:アミ=ジョーン・パケット 評論社 Amazon コモ湖のそばに暮らしていたおじいちゃんは、アメリカにわたることになった時に庭のクルミを一個もいでポケットにいれてきた。新しい土地でクルミを植え、…

「幸せの列車」に乗せられた少年

「幸せの列車」に乗せられた少年 作者:ヴィオラ・アルドーネ 河出書房新社 Amazon 児童書とは言えないかもしれないが、8歳の男の子の視点で描かれた物語には、きちんと子どもの気持ちが描かれている。アメリーゴはナポリの貧しい地域で母親と二人で暮らして…

闇の礎 死のエデュケーションLesson3

闇の礎 (死のエデュケーション) 作者:ナオミ・ノヴィク 静山社 Amazon シリーズ最終巻! ガドリエルことエルを逃がして、目玉くらいと共に学園もろとも消えたオリオンという衝撃の2巻目のラスト。エルはなんとかオリオンを助けたいと願うがすべはない。折か…

熊と小夜鳴鳥 冬の王1

熊と小夜鳴鳥 (創元推理文庫) 作者:キャサリン・アーデン 東京創元社 Amazon 著者のデビュー作とのことだが、きちんと世界が完成された物語。ロシアの北の領主ピョートルは、大公の異母妹マリーナを娶る。マリーナの母は、森からやってきた不思議な魅力をた…

博物館の少女 騒がしい幽霊

博物館の少女 騒がしい幽霊 作者:富安陽子 偕成社 Amazon 冒頭、おどろおどろしい霊を呼ぶ儀式で幕開け、と思ったらその事件はすぐに解決! というところから本格的に物語が始まる。この事件の解決を知って依頼をしてきたのは大山巌と捨松夫人。博物館を見学…

ペイント

ペイント 作者:イ・ヒヨン イースト・プレス Amazon 2012年韓国で第12回チャンピ青少年文学賞受賞作品。舞台は近未来韓国。少子化を止めるために、国家がNCセンターで子育てを引き受けている。だが、NC出身者への差別はなかなか消えない。そこでNCセンターで…

図書館がくれた宝物

図書館がくれた宝物 作者:ケイト・アルバス 徳間書店 Amazon 第二次世界大戦下のイギリス。12歳のウィリアム.11歳のエドマンドそして9歳のアンナ。ピアーズ家の3兄弟は、祖母がなくなったために孤児となった。両親は早々に亡くなっている。厳しい祖母が亡く…

クロスオーバー

クロスオーバー (STAMP BOOKS) 作者:クワミ・アレグザンダー 岩波書店 Amazon 13歳で双子のJBことジョシュとジョーダン。二人の父親は、元プロバスケのスーパースーで、今は引退して二人のバスケを指導してくれている。二人とも超名選手。JBのあだ名は「フィ…

いのちの水 ブルガリアの昔話

いのちの水 ブルガリアの昔話 (世界傑作絵本シリーズ) 福音館書店 Amazon 老いてきて永遠の命を願った父王は3人の王子をいのちの水を求める旅に向かわせる。兄たちのために、あえて危険な道を選んだ弟は、途中で助けたドラゴンたちの力をかりていのちの水を…

夏のサンタクロース フィンランドのお話集

夏のサンタクロース: フィンランドのお話集 (岩波少年文庫 259) 作者:アンニ・スヴァン,ルドルフ・コイヴ 岩波書店 Amazon 表題の「夏のサンタクロース」は、一休みしたいたサンタをヒーシが遅い、ブーツをうばってしまう話。ブーツがないと、クリスマスに飛…

ロッタの夢 オルコット一家に出会った少女

ロッタの夢 オルコット一家に出会った少女 (岩波少年文庫 258) 作者:ノーマ・ジョンストン 岩波書店 Amazon 『若草物語』冒頭、4人姉妹は貧しい家族にクリスマスのプレゼントを届ける。これは、いわばそれを受け取った少女の側からの物語だ。創作だが、当時…

ぼくの犬スーザン

ぼくの犬スーザン 作者:ニコラ・デイビス あすなろ書房 Amazon ジェイクはクリスマスがだいきらいだ、いつもと違うことが起こるから。同じことが起こるなら、安心、いつもと同じ食べ物、いつもと同じ家の中なたいいのに、変わってしまう。時間割が決まってい…

アンナの戦争

アンナの戦争 作者:ヘレン・ピーターズ 偕成社 Amazon ドイツで裕福な暮らしをしていたアンナ一の家は、ユダヤ人として迫害され国外に逃れようと決心するが、ビサが下りず立ち往生。イギリスが『キンダートランスポート』として子どもの受け入れのみを表明し…

水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ

水平線のかなたに 真珠湾とヒロシマ (文学の扉) 作者:ロイス・ローリー,ケナード・パーク 講談社 Amazon 真珠湾で突然の攻撃で命を落とした船員たちも広島の原爆の下にいた人々も、一人一人が人生を持っていた。全体ではなく、その一人一人の姿を紹介するこ…

笑いを売った少年

笑いを売った少年 作者:ジェイムス クリュス 未知谷 Amazon 両親を亡くしたティムは、ある日、父さんとよく行った競馬場で、立派な紳士から取り引きをもちかけられる。 生母から受け継いだ陽気な笑いと引き替えに、どんな賭けにも勝てる能力を得るという契約…

子どもによる子どものための「子どもの権利条約」

子どもによる 子どものための「子どもの権利条約」 作者:尚子, 小口,鮎美, 福岡 小学館 Amazon 中学2年生の2人が翻訳した子どもの権利条約。 本文はかなり意訳ではあるけれど、子どもにわかりやすいだけでなく、読みたくなる(!)ところが最大のおすすめ…

起業家フェリックスは12歳

起業家フェリックスは12歳 作者:アンドリュー・ノリス あすなろ書房 Amazon フェリックスは、6歳の頃からさまざまなビジネスに挑戦してきた。中でも今回のアイディアは、本当にあたる気がする。幼なじみのモーが作ったオリジナルのバースデーカードを売るの…

ふたりはバレリーナ

ふたりはバレリーナ 作者:バーバラ・マクリントック ほるぷ出版 Amazon バレエの大好きな女の子エマと、バレリーナのジュリア。会ったことのない2人のいちにちが、見開きに同時進行で描かれます。 朝起きて、それぞれ同じようにバレエのレッスンへ。やがて…

バレエ団のねこ ピンキー

バレエ団のねこ ピンキー 作者:ノエル・ストレトフィールド のら書店 Amazon ねこのピンキーは、ネズミとり係としてバレエ団にやとわれています。でも実はネズミが怖くて、ちっとも捕まえられません。バレエが大好きなピンキーは、いつ辞めさせられるか不安…

そんなのうそだ!

そんなのうそだ! 作者:ジーン・メリル,坂口 友佳子 岩波書店 Amazon 『歯みがきつくって億万長者』の作者によるゆかいな幼年物。大人が読んでも、あっと驚く楽しい作品だが、読み聞かせをしてあげれば4~5歳から十分楽しめる。なまけもののサルとブタとキ…

世界の教科書でよむ〈宗教〉

世界の教科書でよむ〈宗教〉 (ちくまプリマー新書) 作者:藤原 聖子 筑摩書房 Amazon 世界の教科書では各宗教をどのように記述しているかを紹介しているのだが、それは、まさにそれぞれの国が、宗教に対しどのような対応を取ろうとしているかを示したものにな…

いちばんたいせつなもの バルカンの昔話

いちばんたいせつなもの (世界傑作童話シリーズ) 福音館書店 Amazon 読んであげれば低学年でも楽しめる。「三人の男とらくだの卵」は、ちょっとのんきでぼんやりした3人男の物語だが。そのおバカ加減がなんだか楽しい。「水の精と男の子」は、さらった男の…