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はなの街のオペラ

 

大正時代、宇都宮から東京の井野家へ出た14歳のはな、歌が好きで、流行歌を口ずさんでいたはなは、奉公先に出入りする音大生の響之介からくだらないと非難されてしまった。響之介はドイツ人の父を持ち本格的なテノール歌手を目指しているが、奉公先の主人は大衆的な浅草オペラで一世を風靡していたのだ。令嬢の彩子の歌のレッスンを聴くうちに覚えて歌っていたはなの歌をきいた響之介は、はなの素質に気づいて指導してくれるようになった。そして、響之助は井野家を出て自分の一座を立ち上げる。家を追い出された郷之助に荷物を届けにいったはなは、そこでけがをした主役の代役でいきなり舞台に立つこととなった。最初はおぼつかなかったはなだが、思い切って歌った歌が観客に受け入れられ、思いがけずに浅草オペラの歌姫としてデビューすることになる。実家からは恥さらしと縁を切られ、頼りとしていた響之助は留学に旅立ち、さまざまな困難が目の前に立ちふさがる中、関東大震災が東京を襲う。何も知らなかった少女が、歌う喜びの中で、歌に生きることを選んでいく姿がさわやかに描かれていて楽しい。