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呪 文豪怪談 ジュニア・セレクション

 

 文豪の短編に、ほとんど本文と同じくらいの注を付けた短編集。こうした注付の名作物は、定期的に出るが、この注はいるのだろうか? いるとしても多すぎる(つい:思わず)なんて注まである。作品は岡本綺堂「笛塚」、三島由紀夫「復讐」、などバラエティに富んでいるが、よくこうしたホラー系に収録される小松左京「くだんのはは」は、やはりすごいと思った。戦争中の追い詰められた空気と、最後の不吉な余韻が出色。吉屋信子「鬼火」のガス代が払えず追いつめられて自死する女の不気味さなど、意外な作品が魅力的だった。だが、各作品の質は悪くないものの、編集の姿勢を見ると特にお勧めしたい気持ちになれない。