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ミスターオレンジ

 

ミスターオレンジ

ミスターオレンジ

 

 1943年。ライナスの兄アプケは、志願兵としてヨーロッパに行ってしまった。6人兄弟の3番目のライナスに、仕事が繰り下がり、家業の八百屋の配達を担当することになった。新規のお客さんはヨーロッパから来たばかりとの、難しい名前で、注文は毎回オレンジひと箱。ライナスは、その優しげなおじさんをミスター・オレンジと呼ぶようになった。赤と青と黄色だけで描かれた不思議な絵、手作りの家具、レコードから流れるブギウギ。新しい世界にライナスはあこがれるが、同時にアプケの手紙から戦場の恐ろしさを知ってしまう。絵なんて、戦場では役に立たないと思うライナスに、ヒトラーは絵を恐れたからこそ自分が亡命したことを語り、自由に考えることがヒトラーを打ち負かす力だとミスター・オレンジから聞く。だが、描くために無理をした画家は肺炎でなくなってしまう。画家のモデルはモンドリアン。なるほど原色を使い、絵でリズムを奏でる画家だと納得。だが、モンドリアンの名前を物語の中で出さないことで、むしろ普遍的な雰囲気がでてよかったと思う。