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ぼくの見つけた絶対値

 

ぼくの見つけた絶対値 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)

ぼくの見つけた絶対値 (金原瑞人選オールタイム・ベストYA)

 

 マイクの父さんは優秀な数学者だけど、現実世界に対処することが苦手でマイクのことはほとんど理解してくれず理工系に進むことを期待している。だけどマイクは実は理数系が苦手だ。ある夏休み、外国の学会に招かれた父さんは、マイクを大叔父夫妻のところにいくようにといった。そこで掘り抜き井戸のスクリューのプロジェクトがあるから、それを学べると。だが、大叔父夫妻はとんでもない年寄で、大叔母さんのモーは活動的だが、大叔父のボビーは息子の死から立ち直れずに家の中で座り込んでいて口もきかない。そして実際のプロジェクトとは、ルーマニアから男の子を養子として迎えるための活動だった。手続きや渡航の費用を稼ぐために、小さな町は協力しているが、なにしろみんな貧乏。モーたちだって電気まで止められているし、最大の協力者はホームレスのパスト。それでも、ネットを使って寄付サイトを立ち上げ、町の人たちの小さな努力をまとめるためにマイクは活動を開始する。だが、ボビーは動いてくれないし、父さんにはそうした社会活動が理解できない。外国からの養子という日本にはちょっとなじみがないテーマなので、日本の子には理解しずらいのではないだろうか? また、実は妻を亡くして打ちひしがれていたというパストとかも日本にはいないタイプかも。タイトルの「絶対値」とは、絶対値にするとマイナスもプラスとなることからきている。理数系コンプレックスだったマイクが自信をもち、コミュニケーション力を持たない父の助けになれる存在であることに誇りを持てるところは良い。