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チキン(2017 小学校高学年 課題図書)

 

チキン! (文研じゅべにーる)

チキン! (文研じゅべにーる)

 

 常に正しいことをいうためにトラブルになる登場人物という設定は、マンガ原作のテレビドラマにもあった気がする。どのくらい説得力をもってこの設定ができるかが勝負だが、どうも今ひとつ。まず主人公日色拓は、何事もないこと第一という設定だが、日和見というより、争い事が嫌な穏やかな性格。その日色拓の隣に越してきた真中凛は、常に正論しか言わずにクラスでもめるというのがストーリー。凛は、そもそも拓を「チキン(おくびょうもの)」呼ばわりするが、この時点でどうかと思う。本人が正義の味方をきどるのはいいが、他人を決めつけるのはおかしいのでは? 凛の言動のおかげで、いろいろな矛盾が浮かび上がり、一時もめるが最終的には落ち着き、その一端を担うのが、拓の穏やかな性格(凜が熱い給食の鍋をかぶりそうになったらかばって自分がかぶったり・・・といっても実は中身が冷たくて助かったというオチ)。そして凜の行動は、死んだ母親との約束のせいという種明かしになるけど、自分のせいで弟までいじめられてるのに、こだわるかふつう? ともかく表面的に読む分には「凜は極端だけど勇気を見習いたい」とか感想文書いておけばOKそうだが、ちゃんと読むと、母の死を受け入れられなくて、てんぱってこんな極端な行動をとっていた、だけど拓のやさしさの中で、やっと折り合いがついた物語とでも解釈するしかないかも。だけど、お母さんが死んだエピソードがとってつけた感ありすぎ。あまり良い作品とは思えない。