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そしてあの日 エンリコのスケッチブック

 

もうすぐ14歳のエンリコは、空飛ぶ聖人の伝説があり、観光でにぎわうイタリアの古い街で幸せに暮らしていた。街のみんなとあいさつをかわし、テレサというすてきなガールフレンドもいる。4歳の弟はちょっとうっとおしいが、谷間で羊を飼っているおじいちゃんの手伝いをしながらスケッチをするのが大すきだ。だが、そんな日常は、突然変わってしまった。平和な日常と、それが一変した後半。だが、地震の描写は最小限で、だからこそ失われた街への思いを感じさせてくれる。そして、地震後の乾いた土ぼこりに悩まされている震災後の風景の描写は、実際に震災を経験した身にはとても生々しく、復興への困難を感じさせるが、それでもエンリコは前を向いている。エンリコのスケッチとして描かれている挿絵もとても魅力的。