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コミック密売人

 

コミック密売人 (STAMP BOOKS)

コミック密売人 (STAMP BOOKS)

 

 共産党独裁下のハンガリー、1989年ブダペスト。15歳のシャーンドルは、偶然知り合ったミクラさんからコミックを譲り受ける。定期的にもらえるコミックを4人の友達とともに同級生や周りの知り合いに売る商売を始めた。だが、コミックは、学校では、アメリカ資本主義の退廃文化として厳しく禁じられている。上着にコミックを隠せるスペースを作り、こっそり学校に持ち込んでいる。美しくやさしい母さんは大好きだが、いつも具合が悪そうだ。常に怒鳴りつける父さんは、本当の父親ではない。党の命令で、未亡人の母さんは結婚させられたのだ。ところが、突然、ミクラさんが消えたことで、歯車が狂い始める。顧客たちが不満を募らせ、シャーンドルは密告されるが、上着の隠し場所のおかげで、現行犯は免れる。そんな中の母さんの死。友人たちとのバカさわぎ、とりわけ親友のニコライと語り合う自分たちのコミックの構想のイメージが豊か。しかし、母が死んだ後の父との関係も、ただの憎しみで終わり、ハンガリー民主化の波の中で、主人公は国外へ向かう。いわゆる青春もので、映画にしたらなかなかおもしろそうだが、ちょっとベタな感じがした。