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僕は、そして僕たちはどう生きるか

 

僕は、そして僕たちはどう生きるか

僕は、そして僕たちはどう生きるか

 

 染色家の叔父ノボちゃんからコペルくんとあだ名をつけられた僕は14歳。タイトルと「コペルくん」という名前を見れば、すぐに連想するのは「君たちはどう生きるか」だろう。気恥ずかしいように真正面なタイトルから想像できないほど実際面白い同書を明らかに意識している。

 

君たちはどう生きるか―波涛を越えて (吉野源三郎全集 1 ジュニア版)
 

 

僕は、おじさんの染色用の植物集めのため、学校に来なくなった友人のユージンの家を久しぶりに訪れる。ユージンが学校に来られなくなった理由に自分もまたかかわっていたことに気付く僕。遊びに来たユージンのいとこのショウコと話す中で、ひっそりとユージンの広い田舎屋敷の敷地の中で過ごしていたショウコの友人インジャと出会う。生理的に兵士になれなかった徴兵拒否者の存在を知り、戦時中の心理に思いをはせる中で、ごくふつうの人間だからこそ、兵役でもこなせそうな自分の恐ろしさに気付く“僕”。隠れていたインジャを追い詰めた大人の存在の気持ち悪さとおそろしさ。コペルくんは、明らかに先代のコペル君の思いも受け継ぎながら現代を生きている。鈍感に生きることで誰かを押しつぶしたくはないが、鈍感にしか生きられない中で、それでも守らなくてはならないものを考えたい。