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ハブテトルハブテトラン

 

ハブテトル ハブテトラン

ハブテトル ハブテトラン

 

 タイトルの「ハブテトル」は、備後弁で「すねている、むくれている」という意味の言葉。
学校に行きたいけど、ちょっとエネルギー切れ・・・そんな5年生のダイスケは東京を離れ広島の祖父母の家へ行き、2学期の間を地元の小学校に通うことになる。おばあちゃんの幼なじみで備後なまりバリバリのハセガワさんに「でゃーすけ」と呼ばれ、初めはその言動に驚かされていたが、やがて両親や祖父母に話せないことを打ち明けるようになる。”魔女”というあだ名の担任の先生は、「子どもなんじゃけえ、あんまり『こうせにゃいけん、ああせにゃいけん』と思いつめんで。」と言ってくれる。人懐っこいクラスメイトたちは、初登校したその日からダイスケを遊びや祭りに誘う。田舎の大人や子ども、自然、暮らしにふれるうちに、ダイスケは少しずつ心と体を開いていく。そしてある日、自転車でしまなみ海道を渡りきる決意をする。東京で一緒に学級委員をしていて先に学校を去ってしまった女の子に、会って謝るためだった。
淡々とした語り口の中に、ダイスケを取りまく人々の人生や思いが描かれ、学校という世界に囚われがちな子どもの視野を広げてくれる物語だ。