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屋根裏の遠い旅

 

屋根裏の遠い旅 (偕成社文庫)

屋根裏の遠い旅 (偕成社文庫)

 

 いたずら心から6年3組の教室の屋根裏に上った省平と大二郎。ところが、戻った教室は、そっくりだけど違う世界だった。そこでは日本が戦争に勝利して、まだ戦争が続行していたのだ。だが、本土が戦場になっていないせいか、慣れると意外と違和感がなくなってきた。しかし、不用意な発言で目を付けられるようになってしまう。同じようにこの世界に紛れ込んできた大人と知り合うことで、もう一つの世界の分身が、特定の重なった場所で、たまたま同じところに居合わせると入れ替わるらしいことを知り、定期的に屋根裏に上がるようにする。そして手紙を置くことを思いつき、それが届いたと思うのだが、どんでん返しがおこる。初版は1975年であるため、戦前からのおんぼろ校舎がまだあり、そこが通路となるし、親が戦場に行っている年齢である。現代の小学生だと、この主人公が親より上、さすがに祖父母にしては若い世代かも。無人機による誤爆により学校が焼け落ち、先生やクラスメートがなくなる中で、帰り道を失う中で、このようなことは間違っていると激しく思う主人公。タイムトラベルや無人機の誤作動に、きちんと理論づけしてあるところや、最初は目立たない大二郎が、最後に省平圧倒するほどしっかりとした感じになるところはよいが、気に入らなければ腕力で勝負する省平とか、それでいいのか?(武力衝突じゃないの?)など、微妙に気になるところが残る。大人が描く小学生像っぽいのかもしれない。だが、キナくさい現在、子どもたちが読んでもおもしろいかも。