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列車はこの闇をぬけて

 

列車はこの闇をぬけて (児童書)

列車はこの闇をぬけて (児童書)

 

 14歳のミゲルは、合衆国に働きにいったきり戻ってこない母さんのところに行くため、故郷グアテマラを出る決意をした。メキシコを抜け、アメリカまでたどりつくための道は長い。青少年難民センターで声をかけてきた年上のフェルナンドはすでに何度か経験があるらしいが詳しいことは語りたがらない。同じテーブルにいたヤスは同い年の女の子、そして年下のアンジェロとホンジャラスから来たインディオのエミリオの5人がチームになった。なけなしのお金を搾り取ろうとする国境の船頭、行く先々の大規模な取り締まり、貨物列車になんとか乗り込むが、手入れにおびえ、追い詰められて落ちて死人やけが人も出る。わいろで動く警官に会えればラッキー。親切な神父の助けに一度は救われたものの、そこで気が緩んだために次はハメられて身ぐるみはがされ、さらに身代金目的の誘拐犯につかまる。やっとたどりついた国境では、膨大な手数料が必要となり、やっとたどりついた合衆国で、思いがけない警戒態勢にはばまれる! 100人がのうちたどり着くのは1人という過酷な状況の中で、仲間の中からも脱落者が! はたしてフェルナンドの意図は? ミゲルはたどりつけるのか? そしてたどりついた先には何が? 子どもたちを応援したくなるが、年間平均30万人という不法移民の実態を知ると、この解決方法はやはり自国で食べて暮らせることだろうと思う。移民を止める塀を作るよりも、適切な援助でこうした国が立て直されることがベストだろうけれど、そう簡単にいかない理由を私たちは考えなければいけないのだろう。