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ゴーストダンス

 

ゴーストダンス

ゴーストダンス

 

北の国は荒らされ、そこに住むラップ人たちは居場所を失いつつあった。彼らは魔女に助けを求めるが、すでに死の間際にいる魔女はそれを拒否する。見習いの少女シンジビズは彼らの訴えに心を動かすが、魔女はシンジビスが行くべきところは自分の妹のところであり、そこでちゃんと魔女になるようにと遺言して死んだ。だが、シンジビズは遺言に背き、不法な皇帝のもとに向かう。皇帝のもとにはイカサマ魔法使いのジェキンズが、弟子のクリスチャンを悪魔に仕立て、悪魔を操れると称して仕えていた。不信に凝り固まった皇帝は、常に苛烈な命令や刑罰を宣告する。シンジビズは、なんとか皇帝の心を変えようとしたが、ゆがんだ鏡のような彼の心は、シンジビズの助言をゆがめ、事態は悪化。それでも何とかしようと皇帝のそばで天使として、徐々に彼の心を和らげる試みに取り掛かった。他のペテン師が登場したと思いこむジェキンズ。シンジビズは、自分の力不足を克服するために、死者の世界ゴーストワールドへと向かう決心をし、ついに地下の女王ヘルと向き合う! むさぼられていく北の大地。狂気の皇帝。だましながら、その発覚に怯え、同時に豊かな暮らしを手に入れるためにあがくジェキンズ。常に虐げられ、とりあえずのやさしい一言だけを頼りに生きるクリスチャン。出口の見えない現実の中で、北の国を守るためにシンジビズは神話の世界を呼び戻すような壮大な挑戦をする。成功しながらも成功とはいえないようなその結末はなんとも言えないが、同時に、人間の力を超えた存在の荒々しい息吹はやはり一つの希望だろう。それにしても、こんな方法でしか希望が語れないとは・・・