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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

恋する熱気球

 

 短編5編が収録。「オルゴール」は小5の時隣に越してきた箱森さんとぼくのはなし。家の前に置かれていたオルゴールを、出ていった母のものではないかと思って拾ったのに、自分のかもしれないから時々見にきたいと彼女が言い出してはじまる付き合い。ぼくはしょっちゅう恋をするけど、箱森さんは全然しない。中学3年になったぼくが箱森さんと「内縁のきょうだいになろう」と提案するラストの味わいがいい。「放課後ビブラート」は3歳からやってきたバイオリンの限界を突然知ってバイオリンを川に投げ捨てたら、バイオリン奉納のお礼として変な神に変身する魔法少女能力をさずかる星野美樹。「二兆千九百億」は4回も結婚した父がうっとおしく、夢精する自分も嫌になる大也。「わたしを見ないで」は、ふと気づいたら孤立していて、このまま誰にも見られたくないと自分がカプセルに入っていると思う”わたし”。そして「恋する熱気球」は、ある日イケメンの若い先生と目が合ったとたん、着火してふわふわ浮いてしまい。なんなんだとパニくる柚乃子の物語。それぞれのカラマワリするような感じがなんだか心当たりがあるけど、それを軽やかな形に描いているのが良かった。