藤堂ミハイルは、母親がロシア人。小さいころから日本育ちで、自分では日本人のつもりなのに、エキゾチックな顔立ちのせいでガイジン扱いされるのが嫌でたまらない。見た目がステキと妙な好意を寄せられるのもまたイヤで、中学2年の現在、不愛想で目立たないキャラとしてまわりに溶け込むことをモットーとしている。科学部電脳班に所属しているのも、たいした活動もしない気楽な部だからだ。ところが転校生山口アビゲイル葉奈がきたせいで心がざわつく。あきらかにアフリカ系の外見で目立つのに、蟲が好きだと公言して一気にみんなの反感をかった。孤立して、いつも一人だが、虫眼鏡をもって校庭で楽しそうにしている葉奈。担任のちょっと頼りないメグちゃんこと武田先生は、葉奈を心配して休眠状態だった科学部生物班として受け入れ、葉奈は隣の部屋でカナヘビやらワラジムシやらの飼育を始める。みんなに気味悪がられながらも、ミハイルは部長の大橋センパイと共にようすを見に行き、しだいに興味を惹かれるようになるが、部員の梨々花は、激しく反発して突っかかる。家では兄のユーリが、やはり居場所を見つけられずにロシアに行くと言い出しもめている。ごきげんに飼育をする葉奈だが、ボウフラの飼育がきっかけで、有害昆虫を飼育する生物部は廃止すべしとPTAから声も上がり窮地にたたされた! 次々にトラブルが発生するが、はねのけようとする葉奈と、その姿に刺激を受けるミハイル。そして、あからさまに対立する梨々花が、だからこそ決して陰口を言わないことにも気が付く。各章のタイトルが、「カミキリムシ」「カナヘビ」「ワラジムシ」など生き物の名前で、研究にチャレンジする中での工夫も楽しい。たよりない担任のメグちゃん、イヤミな教頭、敵か味方かわからない校長など、キャラもたっていて、楽しく読める。