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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

海底二万海里

 

さまざまな海洋に出現する謎の怪物が、実は潜水艦ノーチラス号だったとわかるまでの導入が、すでに迫力ある物語で引きこまれる。

動力・熱・光のすべてを電気でまかなっている「近代科学の粋をつくした」ノーチラス号。艦内の充実した施設(サロン、図書室、博物館のようなコレクション)の驚き。

潜水服での海底の森散策にはわくわくして。難破船の財宝やサンゴ礁につくられた墓地の神秘。緊迫感のある、クジラやサメ、大ダコとの闘い。終盤には、南極の大氷山に閉じこめられてしまう恐怖。

登場人物の人柄や言動も、魅力がある。ネモ艦長は、時どき部屋にこもったり、パイプオルガンをものがなしく響かせたりするのですが、地上と人間社会から関係を断ってしまったその理由は本書では明かされず、後の作品『神秘の島』でわかります。

また、潜水艦内に捕らわれた博物学者アロナックス教授、忠実な助手コンセーユ、銛打ちの名手ネッドが、無事に脱出できるのかという行く末。

730ページの大作を読み通すのは大変で、私の場合、歴史的事象や様々な魚類の名前などを列挙され出すとしんどくなりましたが。

未知の世界へ導いてくれる素晴らしい挿絵。そして本の重みも、読書の醍醐味です。 (は)