児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

科学はこのままでいいのかな

 

私たちの「生き方」や「社会のあり方」を、哲学ではなく科学で考えてみよう、と呼びかける本書。

それには、まず、人間は自然の一部という「中から目線」に切り替えよう。生命の誕生から現在を扇形に描く、「生命誌絵巻」を見れば一目瞭然。現存する生物たちは扇の天に、多様な広がりを見せ、ヒトもアリもヒマワリも、バクテリアも、高等・下等などなく、みな同じ「生きもの」です。

このような視点が生まれた経緯を、DNAとゲノムの発見の歴史で説き明かす前半。後半は、それなら、自然の一部として暮らすのと、便利な機械をもち自然から離れていくのと、あなたは、社会は、どちらを選んだらよいでしょう、という問いへ。「効率よく、手を抜き、思い通り」の「科学技術社会」は、私たち人間をも生きづらくする。手も時間もかかって、思い通りにならない多様な「生命論」へ転換して、社会づくりしていきましょう、と提案します。

「人間ドラマ」としておもしろいと紹介されている『二重らせん』(J・D・ワトソン著)を、読んでみたくなります。 (は)