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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

なみのいちにち

 

波を主人公に朝から夜までを、海辺を訪れる人々、生き物たち、夜にはおばけの過ごす様子で物語るストーリー。だが、途中、老人が風に帽子を飛ばされ、女性に拾ってもらう場面から妻との日々を回想したり、かと思うと、最後はおばけと魚のダンスパーティーというファンタジーになったり、視点があちこち変わる。

また、終始、違和感に感じたのは、波に表情(目、鼻、口)が描かれていて、それが小さい波の一部分であること。海や波は、もっと大きく広いイメージです。人が触れるところだけが波ではないと思うのですが。

一方で、海と空の美しい風景や、海辺で聴こえる音の表現、たとえば打ちよせる波の音「さん ささーん」、カモメの鳴き声「カウカウ」、「ざりり ざりり」という棒で砂をひっかく音?、などは、海と身近に接してきた著者にしか表せない素晴らしさ。

作者は、宮城県気仙沼出身の美術教師で、父は画家。1986年生まれ、2020年絵本作家デビュー。「本書は、海の町で育った著者が描く、はじめての海の絵本。」とのことです。 (は)