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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

君の話をきかせてアーメル

 

難民としてイギリスに来たクリストフも中学生になった。アフリカから転校生のアーメルがやって来て、互いにフランス語がしゃべっるというので隣の席になるが、アーメルは一方的に敵意を向けてきた。アーメルはルワンダでの虐殺を逃れ、母親と共にイギリスにたどり着いたのだが、自分たちを襲ったツチ族への怒りで荒れ狂っていた。故郷では家族のために一人前に働いていたのに、ここではなぜ学校なんかにいかなきゃならないのか? なぜ忌まわしいツチ族の隣に座らなければならないのか理解できない。実はクルストフの父はフツ族で母はツチ族。クリストフはフツ族だが、外見ではツチ族に見えるのだ。しかし、アーメルはそんなことは知らない、クリストフを人気のないところで襲撃してきた。クリストフは必死に抵抗してアーメルは倒れるが頭から血を流して意識を失っていた。辺りにはだれもいない。クルストフの頭の中に、このまま逃げたいという思いがよぎる。前作では語られなかったルワンダ内戦の恐ろしさや、一度敵対したことによる憎しみの連鎖が語られる。かなり深刻な内容だが、遠くない過去の出来事として、そして民族対立の悲劇として子どもたちにも伝えるべき内容だと思う。