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ガラスの顔

 

ネヴェルナはチーズづくりの親方に拾われてせいちょうした。ネヴェルナが住むのは地下都市カヴェルナ。ここの人は≪面≫と言われる表情を身に着けて成長するが、貧乏なものほど≪面≫は入手できず、金持ちだけが豊富な≪面≫を駆使する。常に面をかぶるように言われて育ったネヴェルナは、好奇心で外に出たくてたまらないのに、親方は家の外に出してくれない。≪面細工師≫マダム・アペリンに心ひかれ、ついに飛び出したネヴェルナは、自分が誰にも教えてもらっていないのに、内面が素直に出る表情豊かな表情を持っていることを知る。そしてこの世界の支配者大長官と、その部下の審問官と対立派閥チルダーシンの争いに巻き込まれる。表情さえ与えられずに酷使されているドラッジ(地下最下層の働き手)の存在を知り、不思議な泥棒クレトプマンサーの手を借りてネヴェルナは、地下の脱出を企てる。記憶を消すワイン、たえず変化する地下の地図づくりに取りつかれているカートグラファーと呼ばれる集団など、イメージが豊か。ちなみに、この物語を考えたきっかけは、たった一人だけ心をさらけ出してしまう子がいたら、と思ったことだったとか。なんとなくマンガの『サトラレ』を連想した。