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フォグ 霧の色をしたオオカミ

 

1880年ロンドン。クレイは≪泥ひばり≫(川や下水の泥をあさってめぼしいものを拾っては売る仕事)をしているストリートチルドレンだ。体格のいいトッド、頭の回転が速いヌッキーと3人で≪ブラックフライアーズ橋の暴れ者≫として仕事をしていた。橋の下は、流れて来たものがひっかかるのでいい場所で、熾烈な場所争いを制して守っている。注意しなきゃいけないのは、じゅうたん工場の子ども狩りだ。孤児をつかまえ、工場の織の仕事で死ぬまでこき使われる。クレイが5歳で孤児になった時に、保護して泥ひばりとして自活できるようになるまで保護してくれたのはサルじいさんだ。サル爺さんは読み書きやまじめな生き方を教えてくれて、今でも、何かあれば相談に載ってくれる。そんな中、街にサーカスがやってきた。呼び物はイギリス最後のオオカミ。クレイはオオカミに心惹かれてサーカスに忍び込み、ジプシーの少女オリーと知り合う。彼女は占いをする祖母と共にサーカスにいるのだが、彼女の手引きで見せてもらったオオカミは、檻の中ですさんでいた。シルバーの毛色からフォッグと名付けたオオカミを助けてやりたいという強い思いに突き動かされるが、相手は野生の獣、調教と言うより虐待の恐怖で動物を従わせているヒラムの手から救い出したいのに、フォッグに味方だと理解してもらえるのか? サルじいさんの助けを借りて、クレイの挑戦がはじまる。イギリスの児童文学と思ったら、作者はなんとイタリア人。滅びゆくオオカミへの憧れが魅力的に描かれている。