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マルカの長い旅

マルカの長い旅

マルカの長い旅

ポーランドに住む医師でシングル・マザーのハンナは、ドイツ兵のユダヤ人狩りを逃れるために、ミンナとマルカの二人の娘を連れ、ほとんど着の身着のままで、村を脱出する。しかし、7歳のマルカは過酷な山越えで発熱。後から送り届けてもらう約束をして案内人にあずけて別れるが、手入れを恐れた案内人は、マルカを放り出した。マルカは、さまざまな人の善意で、なんとか命をつなぎ、ポーランドのゲットーに送られるも、口に入るもを懸命にあさりながら生き延びる。ミンナは逃亡中に出会ったルベンと恋におち、母ハンナの手から徐々にはなれていく。マルカが到着しなかったことを知ったハンナは、死に物狂いで再度ポーランドに戻ることを試みる。日常の隣りにあるユダヤ人狩りの異常さが恐ろしいが、同時に、難民にわずかとはいえ手を差し伸べる人たちの姿、飢えるマルカに施す人の姿に救われる。無力な女の子が全ての感情をストップさせて生にしがみつくサバイバルものとしても迫力がある。