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路上のストライカー (2014 高等学校 課題図書)

 

路上のストライカー (STAMP BOOKS)

路上のストライカー (STAMP BOOKS)

 

 デオはジンバブエで母と祖父、そして発達障がいのある兄イノセントと3人で暮らしていた。国は混乱し、飢えが日常の毎日。突然やってきた兵士が村を襲撃。アメリカからの援助物資を奪い、村人を虐殺した。テオは、兄とともに生き残り、まちの知人に助けを求めるが、そこにも兵が来て、南アメリカに向かうことように言われる。ワニのいる川、グマグマといわれる追剥、ライオンのいる野生保護区を越えて、やっとたどり着いた南アフリカ。トマト農場で雇われ、天国に来たと幸せを感じるが、サッカーで友達になった地元の子供たちから、職を奪った難民と差別され、農場を抜け出す。だが、都会はさらにきびしくホームレス生活となる。やっと、橋の下で暮らす難民グループに受け入れられるが、外国人排斥の暴動の中、兄は殺され、デオは絶望する。ダメになりかけたデオを救ったのはサッカーだった。だが、難民が南アメリカチームでたたかえるのか? 松葉づえのパッツォン。サッカー仲間ティージェイなど、逆境の中でほかの少年たちの姿も印象的。

村を襲った兵が、食糧に見せる無邪気な笑みが、彼らも飢えているのだと感じさせる。貧しいもの同士のいがみ合いによる難民排斥。自分の居場所を見つけられたデオほど、幸運でない子どもたちが多いという現実を思うとおそろしい。