児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

えんの松原

 

えんの松原 (創作童話シリーズ)

えんの松原 (創作童話シリーズ)

 

 藤原氏全盛の平安朝。主に逆らって追い出された音羽丸は、宮廷に仕える姉のもとに身を寄せるが、そこでは女官しか勤めが許されないため、女装して音羽と名乗る。だが、ある日、忍び込んできた男の子に、一目で男だと見破られてしまった。その男の子は東宮で、祟りのため、幼い日から何度も具合が悪くなっていた彼と音羽の間に友情が生まれる。宮には「えんの松原」と呼ばれる怨霊の住む松林があった。音羽は、東宮を祟る存在こそ、もう一人の東宮自身(女の子として生まれるはずだった姿)であることを突き止める。東宮がその自分を解放するラスト、タカ狩りのイメージとだぶらせた描写は魅力的です。ちなみに、えんの松原のモデルというので、下賀茂神社の松林を心躍らせて見に行ったら、意外に貧相でがっかりしました。当時はうっそうとしていたのでしょうが、いまは、都会の中のオアシス程度です。平安は遠くなりにけり・・・・