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こんぴら狗(2018 課題図書 小学校高学年)

 

こんぴら狗 (くもんの児童文学)

こんぴら狗 (くもんの児童文学)

 

 旅行も難しい江戸時代、犬を代理として四国の金毘羅さまにお参りに出す風習を踏まえた物語。主人公(?)の犬のムツキの行動が犬らしく描かれているのが魅力。ムツキは、線香問屋の娘弥生に、子犬のころに拾われた。懸命の世話で命を救われ、すくすくと育つ。ところが弥生が重病となり、両親は快癒祈願をこめて、伊勢参りに行くご隠居に託してムツキをこんぴら狗として送り出す。餌代とお札代というお金をつけているのに誰もそれを盗もうとせず、代参をする犬としてかわいがってやる。街道を行き来する様々な人生がムツキと交わるが、ムツキは行先もわからぬまま、それらの人の好意のおかげで、ついに金毘羅参りを成し遂げて無事に帰郷する。現代なら一泊二日もあれば十分行ける行程が、約3ケ月もかかる当時の旅の大変さ、地図を見ながらたどって読んでみるのも面白いと思う。ムツキがいかにも素直な犬としての描写が魅力なので、犬を飼っている子なら、自分の犬のことを思い浮かべながら読んでも楽しいかもしれない。ただし、334pある時代物なので、日ごろ本を読みつけていない子は読み通せないかも。