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死の国からのバトン

 

死の国からのバトン (少年少女創作文学)

死の国からのバトン (少年少女創作文学)

 

 シリーズ2作目。今回の主役は小学校6年生になった直樹、そして水俣病を思わせる公害病食品添加物の問題、過去の農民の苦しみなどが扱われている。物語は猫のルウのようすがおかしくなって死んでしまうところから幕を開ける。直後、直樹とゆう子が父方の祖父の家に遊びに行き、そこで直樹が五百羅漢と「あくにんのはか」と書かれた不思議な墓を見る。直樹はゆう子を助けて崖から落ち、意識がなくなった夢の中で直七という男のこと友達になり直右衛門じいさんの家に遊びに行った。直右衛門は、荒れ地だったこの地に山から水をひく大工事を苦心して成功させた人物だった。直樹は死んだルウと出会えるときいた山のばばさに会いにいこうとするなかで、過去の村人と出会う。当時の時代背景を反映したネコがおかしくなる病とは水俣病と思われる病気がでてくるが病名は書いてない。逆に豆腐の添加物AF2でおかしくなったという親戚がでてくるが、AF2になじみがないのでネットで調べてその事件がわかった。凶作で飢え死にした子どもや、まだ少年の身で直訴して処刑された直七など、さまざまな物語が重ねられ伝説やわらべうたのイメージが魅力ではあるが、今読むと子どもには社会的背景がちょっとわかりにくいだろう。私が一番気になったのは、直樹がけがで東京に帰れず、テレビを見たがって、テレビをつけると周囲に無関心で取り付かれたようにテレビを見ているというシーン。これは母親松谷みよ子のテレビ批判の視点だと思うが、主人公直樹と同化して読み進もうとする子はどう感じるだろう? 物語であるよりも、社会批判風にされては読む方にはちょっとつらい。