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豚の死なない日

 

 冒頭、主人公が産気づいた牝牛に出くわし出産を助け、おまけに喉の腫瘍まで取ってやるという衝撃的な場面に一気に引きこまれる。ロバート少年は牝牛の持ち主からお礼に子豚をもらい、ピンキーと名付けてかわいがる。家はシェーカー教の「質実の民」の教えに従うつましい暮らしだが、父は豚の屠殺の仕事に誇りを持っている。ピンキーは立派に育ち、町で行われた家畜の品評会で1等をとる。しかし不妊症とわかり、ロバートも手伝って殺すことになる。父親は、男は13歳になったら一人前、やらなければならないことをやるのが大人だと言い、ロバートに家畜や畑の世話を仕込んでいく。実は父は結核を患っており、先が長くないことを悟っていたのだ。
13歳の誕生日から3カ月、父の葬儀を取り仕切る主人公の姿は身につまされるが、葬儀に集まった人々をみて、父は貧しくても豊かに生きたのだと心から思えるラストに救いがある。アメリカ、ヴァーモント州が舞台の自伝的作品。  (は)