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ある子ども 

 

ある子ども

ある子ども

 

 ギヴァー4部作の完結編。1巻目のジョナスが行動を起こすきっかけを作ったゲイブにまつわる物語。主人公はクレア。さほど優秀でもなく出産母となった彼女は、イレモノとして順調にその役割を果たしていたはずだった。だが、出産時に何かのトラブルが起きた。帝王切開となり、これ以上出産ができなくなった彼女は養魚場に配属される。だが喪失感に悩まされる中で、彼女は養育センターにボランティアとして入り込んで自分の息子36番を見つける。息子は過敏な問題児として養育係の手を煩わせていた。担当の男はジョナスの父。そして36番の過敏さが矯正できないことから、彼は処理されようとしていた。「ギヴァー」で語られたように、ジョナスは36番ことゲイブを連れて村を出る。この事件に衝撃を受けたクレアは、外部から来た船に乗せてもらって息子を探しに村を出るが、船は難破。記憶をなくしたまま、絶壁に囲まれた小さな村にたどり着く。やっと記憶を取り戻したクレアは村を出て、再度息子を探しに行こうとするが、絶壁にチャレンジして村を出ようとしたのは、最終的に失敗して杖なしで歩けなくなったアイナーだけだった。そのアイナーは、困難は絶壁をのぼった後にくると謎の言葉をいう。果たしてクレアは息子にあええるのか? 物語は最終的に3巻目のメッセンジャーの後の出来事につながり完結する。それまでの巻を読んでいないと、ちょっと内容は理解できないだろう。また、微妙に不自然(例えば絶壁に囲まれた村だが、孤立してあまり大きな村ではなさそうなのに、婚姻などがどう成立しているのか? アイナーは堂々とチャレンジしたのになぜ成功できなかった? など、ちょっと物語の矛盾を感じる部分もある。とはいえ、シリーズのファンとしては読まないではいられない一冊だろう。