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MASATO

 

Masato (集英社文庫)

Masato (集英社文庫)

  • 作者:岩城 けい
  • 発売日: 2017/10/20
  • メディア: 文庫
 

第32回坪田譲治文学賞受賞作。お父さんの転勤でオーストラリアに来た真人。本当は6年生だが5年生に編入して現地校に入ったが、言葉がわからないから授業はチンプンカンプンだ。スシ、スシと言って嫌がらせをするエイダンにいじめられ、つい喧嘩をしてしまうが、理由を説明できずに悔しくてたまらない。やはり孤立した感じの秀才中華系のケヴィンや、太っていて不器用なせいでいじめられているノアとやっと交流がはじまり、さらに大好きなサッカーがきっかけてジェイクと仲良くなり、居場所ができた。だが、母さんは落ち着かない。日本に帰った時に困ると言って日本語の補習学校に行けと言い始め、サッカークラブに行きたい真人は悔しくてたまらない。姉さんは中学受験で日本に戻り、母さんも日本に帰りたくてイライラしている。だけど、オーストラリアになじんだ真人は、こちらの中学に行きたくて、こっそり受験手続をしてしまうものの、そこは思いがけずも名門校。合格は簡単ではない! 仲間が欲しい、一緒に遊びたい一心で急激に順応する真人は、自分をMASATO、いやみんなが呼ぶMattoだと思っていく。だが、母親は自分が理解できないほど英語をしゃべるようになった息子にパニックを起こす。居場所とは何か、家族の関係とは何か、異国という舞台で各自が改めて気付いていくようすが新鮮。結局のところ、一歩をどう踏み出すかなのでしょうか?