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長い冬

 

ローラの物語青春編1巻目。今年のコロナウィルスによって引き起こされた先の見えない不安と、できることを続けた生活を思いながら読みました。
ローラたちにとってのそれは、長く厳しい冬でした。9月のいつもより早い霜から始まったローラ13歳の冬は、翌年の4月までおよそ8か月間も続いたのです。くり返し襲ってくる猛烈な吹雪。町に物資を運ぶ汽車が止まり、6人家族を養う食料やストーブの薪はまたたく間に底をつきます。父さん、母さんは知恵と工夫をこらして暮らしと命をつなぐのです。干し草を固くよじった棒を薪の代わりに。種小麦をコーヒーひきでひいてパンを焼く。クリスマスにはささやかな物を贈り合い、吹雪に負けないように歌って心を奮い立たせる。それでも「寒さと暗闇と家事とぱさぱさの黒パンと吹きまくる風」しかこの世にないのかと思われる日々。ある夜、ローラが耳にしたポタポタと垂れる水滴がその終わりを告げてくれます。ようやく迎えた春、5月のクリスマス祝いのなんと幸せなこと!
あとがきにあるローラの言葉のように、小さな日常の喜びを幸福とし苦しい時にも元気でいて、新しい年がよい年となりますよう祈ります。 (P)