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クモのアナンシーージャマイカのむかしばなし

 

カリブの島々で特別な存在、クモのアナンシ。人間でもありクモでもある小さなアナンシが、民話の中で活躍するようになったのはトラとの賭けに勝ったから、という「アナンシとトラ」から始まる。森でいちばん強かったトラは、この後まぬけな失態を繰り返す(「アナンシとムクドリモドキ」や「アナンシとヤムイモ」)。ずる賢くて演技派なアナンシは、人の同情をさそうのもうまい。野ネズミが情けでくれた4本のバナナを持ち帰り、「おまえたちが食べなさい」と子どもたちに差し出したのに結局5人家族のなかでいちばん多く食べてしまう。また、医者や牧師に扮して魚やカニといったえさを手に入れたり。最後は、トラとサルを裏切ったせいであみの巣にくらすことになったという由来譚(「アナンシとクモの巣」)。マーシャ・ブラウンの描くアナンシは確かに人間でありクモであり、の姿です。 (は)