ウェンは中国の孤児院で暮らしている。長年、自分を養子に迎えてくれる親に憧れてきたが、ついにアメリカにひきとられることになった。ただ、シューリンのことが心配でたまらない。ずっと親友で姉妹同然のシューリンは、足が悪い。もし養子にいったら、相手の親の面倒をみつける約束をしていた。
どんな暮らしが始まるのか不安でたまらないウェン。迎えに来たのは優しそうな青い目のママとちょっと太ったパパ。そして同じ中国人の養女の妹エイミー。車に乗ったのは生まれて3度目。飛行機は初めて! でアメリカに着いた。両親は優しく、妹も甘えてくるが、ウェンはできるはずの英語が一言も出てこないし、抱き寄せられるとビクっとしてしまう。家は立派で、自分の部屋の広さに驚いてしまった。食事はおいしく、おもわず後のためにとっておこうとすると、いっぱいあるから大丈夫と言われる。でも、もし孤児院に返されたらどうしようとビクビクせずにはいられない。自分の洋服もすばらしく、どの洋服も着たくて、学校の初日、3枚も重ねて着て行った。なんとか他の子と同じことをしたいとあせりながら、周りの子たちに圧倒されるけれどハナという女の子と仲良くなる。けれどシューリンのことが忘れられない。約束を果たしたい、だが、どうすればいいの? しかもお父さんが急にリストラされてしまった。自分だって中国に返されるかも。そしてシューリンを何とかしたいと訴えるウェンを妹のエイミーや友人のハナは、自分達よりその子がいいのか? という。しかも養子として迎えられる期限は14歳までなのに、シューリンはあと少しで14歳。異文化の中で混乱するウィンを辛抱強く理解して受け入れる両親や周囲の姿がすごい。作者は中国から養子を2人迎え入れた経験があり、それを元に書いたというが、なるほどと思うリアリティがある。日本だと、子どもを引き取って育てるというのはかなり特殊な事例になるのではと思うだけに、こうした積極的なアメリカの物語は刺激的。