第二次世界大戦中、ローマのユダヤ人街に住むエマヌエーレは12歳の男の子。戦時下の暮らしは苦しいが、路上販売で稼いで家計を助けていた。だが、突然ドイツ軍が名簿を元にユダヤ人街の人間を連行しにきた。母さんがつかまったのを見たエマヌエーレは、思わず母さんに駆け寄り一緒につかまるが、母さんはトラックが止まったすきをついてエマヌエーレを外に逃がしてくれた。とっさに路面電車に乗り込み車掌さんに「ユダヤ人で親衛隊に追われている」とささやくと、車掌さんは、自分ののそばでじっとしているように。と助けてくれた。乗り込んでくる人が語る街の真偽不明な情報。窓の外のユダヤ人連行のようす。車内では、ナチの賛美をする人もいれば、乗り込んできたユダヤ人と思われる母子をさりげなく自分の家族としてかばう人もいる。交代する車掌さんたちの引継ぎで、エマヌエーレは食べ物を分けてもらい、夜は車両基地で匿われた。二日半路面電車に乗り続け、ついに近所の知り合いと出会い、母以外の家族が無事だと知り、電車を降りて再会を果たす。母が行方不明になったことで廃人のようになってしまった父。それでも食べるために商売をするエマヌエーレ。そんな彼から高い値段で品物を買ってくれるドイツ兵もいる。抵抗運動に携わっている兄貴分のアッティリオからきかされるナチの残忍なやりくち。そしてやっと連合軍が勝利するが、母親は帰ってこなかった。実際の体験を元に描かれた物語。戦争とユダヤ人差別の非情さを描くが、同時に、自分のできる範囲で、なんとか手を差し伸べようとする人々の姿が描かれ、ときにはそれが敵であるはずのドイツ人であるところがいい。アウシュビッツにユダヤ人を運んだ列車とエマヌエーレを救ってくれた路面電車が、対照的に描かれる。危機の中でも、そして無力であっても前向きであり続けようとするエナヌエーレの姿が魅力。