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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

コタンの口笛 第1部・下ーあらしの歌ー

 

美術の谷口先生の絵のモデルをしたマサは、お礼にと札幌見物に誘ってもらうが、食堂で給仕する娘がアイヌと気づきながら、親しく声をかけられなかった自分のいじけ心が嫌になる。ユタカはユタカで、アイヌ族の老酋長夫婦が、駅前で観光客の言いなりにポーズをとる様子を見て、あやつり人形のようだと腹を立てる。

アイヌ差別の苦しみは、マサやユタカ姉弟のほかにもあり、日本人の青年との縁談を断られたフエが、家を出て姿を消してしまう。それは、マサたちも信頼する小学校長の息子との話だった。

ユタカは、小学校の担任だった中西先生が通信教育で英語を学んでいることに興味をもち、一緒に勉強を始める。その成果があり、中学で最初の試験でクラス1番の成績をとるが、カンニングを疑われ、背中に張り紙をされる。

心で煮えたぎる炎をたびたび抑えてきたユタカも限界となり、ゴンに決闘を申しこむ。マキリ(狩猟や漁に用いる小型の刃物)にトリカブトの毒を塗り、自らも死を覚悟するユタカで、第一部が終わる。 (は)