アイヌのコタン(村落)に暮らすマサは中学3年生。弟のユタカは1年生。幼いときに母を亡くし、日雇いの父と貧しい暮らし。母親は和人だが、アイヌの血が濃い2人。級友からたびたび差別や嫌がらせを受けている。マサは、クラスで発言力のある後藤ハツの財布が見当たらないと盗みを疑われ、ユタカの方はガキ大将のゴンとサボがやたらと絡んでくることに嫌気がさしていた。
「あ、犬がきた(アイヌがきた)」とユタカが笑いものにされたり、マサがアイヌの文化を調べた発表に対して差別的な発言がされたりする場面は、きつい言葉が並ぶ。それでも2人は強く立ち向かい、その心の内が描写される。
一方、2人をなんの区別なく扱ってくれる級友や先生などが周囲に多いことは救われる。絵を描くのが得意なマサは、慕っている美術の谷口先生から、絵のモデルになってほしいと頼まれ、アイヌの自分でよいのかと迷った末に引き受ける。ユタカは、牧場を営む友だちの家に誘われ、家族同然に風呂まですすめてもらい身も心も温まる。
作者は、アイヌの同級生たちと過ごした経験をもつ。