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熊と小夜鳴鳥 冬の王1

 

著者のデビュー作とのことだが、きちんと世界が完成された物語。ロシアの北の領主ピョートルは、大公の異母妹マリーナを娶る。マリーナの母は、森からやってきた不思議な魅力をたたえた美女だった。妻は3人の男子と2人の女子を出産し、最後のワシリーサの出産時に命を落とす。ワシリーサには不思議なものが見えるが、みんなには見えない。それは家や川の精霊たちだった。キリスト教が入りつつも、精霊を敬う慣習を守る田舎の人々。はつらつと森を駆け回り、ワシリーサは成長するが、あまりに奔放な娘のために、ピョートルは2番目の妻を迎えようと決心した。皇帝から与えられたのは妹アンナ。アンナには常に異形の者が見え、それを悪魔として恐怖していた。そして権力争いから左遷されたコンスタンチン司祭は、ピョートルの村で異教の習慣の撲滅に奔走。精霊たちの力が弱まり、森の力が弱まる中で、熊と呼ばれる恐ろしい存在が目覚める。マロースカ(霜の王)など、ロシアの昔話を巧みに取り入れながら、父や兄たちの愛情、厳しいがやさしい乳母のドーニャ、そしてさまざまな精霊たちが活躍する。3部作とのことで、続編が楽しみ!