児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

パレスチナのちいさないとなみ

 

『瓶に入れた手紙』でわからなかったことが、いろいろ本当によくわかります。

パレスチナ人」というひとくくりではなく、1人ひとり顔があって、名前があって、仕事と暮らしがあって、生きている、ということが、高橋美香さんの写真と文章で前半に、後半は、パレスチナ地域の人たち(アラブ人もユダヤ人も)とフェアトレードで共に仕事をする皆川万葉さんの文章で。

笑顔の写真が多いのは、写真家が何度も現地に通い、そういう関係をつくっているからで、後半を読みすすめていくと、とても笑って受け止められないパレスチナの仕事環境の過酷さ、人権が踏みにじられている現実が、突きつけられます。それでも笑い飛ばす人の言葉には、何と言っていいのか。

イスラエル軍はいまや、外出禁止令を出さなくても、いつでもやってきて逮捕や暗殺ができるから、外出禁止令の必要がないんだよ。ハッハッハー」「日本は地震が多いね。パレスチナは戦争が多いよ。ハハハ」

さらに、パレスチナの歴史や、複雑な背景を解くQ&Aでは、「オスロ合意」の問題点や、「パレスチナ自治政府」に対する民衆の”冷ややかな”視線、日本政府に対する厳しい言葉――支援には感謝しているが「お金がほしいわけじゃない」「きちんと批判をしてほしい」。ここには、皆川さんが指摘する沖縄の人と米軍基地、福島の人と原発事故の問題のほか、核兵器禁止条約に対する態度も思い当たります。

日本にいるわたしとして、できることをしたいと考えました。 (は)