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わたしは食べるのが下手(2025年課題図書中学校の部)

 

葵は給食の時間が苦手だ。のどが詰まってうまく食べ物を呑み込めない。残さないで、速く食べなさいと急かされるとますます食べられなくなる。特に苦手なのは揚げ物。ある日、無理に口に入れたが気持ちが悪く、思わず保健室に駆け込んで履いてしまった。そこで咲子と会う。吐くのを解放してくれた咲子は、葵が食べられないことを打ち明けると、それを認めてくれた。そんな二人の前に栄養教諭だという橘川が現れる。給食が食べられないなら、どうして欲しいのかの要望書を出してみろと言ってきた。気が弱く、いつも流されがちな葵。攻撃的だが、実は問題を抱えている咲子。イスラム教徒であるため、みんなと同じ給食を食べられないこともあるラマワティ。一方で、給食が楽しみでたまらないというコッペこと久野くんもいる。給食という問題の中で、葵と咲子のそれぞれの想いが交差する。「食べるのが下手」という、周りから理解してもらいずらい問題を取り上げている。食べることは生きること、だから生きることが下手? という問題提起は、いろいろな意味で生きずラサを抱えている子どもたちには共感できる作品だろう。