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新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

両手にトカレフ

イギリスで暮らす14歳のミアは飢えている。母親が生活保護費をドラッグに使ってしまい、食べ物を買えないのだ。なんとか弟のチャーリーに食べさせたいと思うと、自分の食事を抜くしかない。学校の給食は一定額まで無料だが、それでは飢えてしまう。こっそりと食事を万引きする。学校もわかっていて見逃してくれる。だが、クラスのイーヴィに見られた。かつては同じように貧しく友人だったが、イーヴィの母ゾーイは、なんとか這い上がって、自立した暮らしにたどり着いている。ゾーイがいるフードバンクに行くことでなんとか食べ物を手に入れるミア。金がないため、SNSすらできず、無料の図書館で過ごすミアがふと手にした日本の昔の女の子金子文子の手記が、あまりに自分に似ているので、激しくひきつけられる。学校の勉強はダメだが、読書が好きなおかげで文章だけは褒められるミアがなにげなく書いたラップに、同級生のウィルは目をむく。彼女の心からの叫びの迫力がすさまじかったからだ。だが、母親は悪化、ソーシャルワーカーが来て立ち直りかけるが、いつものように途中で挫折。このまま保護されれば弟と引き離される! ついに、ミアはチャーリーと共に逃げ出そうとするのだが、14歳にとって、過酷なチャレンジとなっていくのだ。 ミアと金子文子がシンクロして描かれている。それにしても、食事ができない貧困、あってはならないこうした事態が増えていることが恐ろしい。