児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

子どもへのまなざし

 

 

子どもへのまなざし (福音館の単行本)

子どもへのまなざし (福音館の単行本)

 

満たされた子ども時代を送ることの大切さを、豊さゆえに、我慢ができなくなった現代社会を生きる親に懸命に伝えようとしている。甘やかすからダメになるのではなく、「甘え」が自分を認めてほしいというサインであること。小さいときに手をぬけば、大きくなってそれをとりかえすのがどんなに大変かが、児童精神科としての説得力をもって書かれる。 親によりそうやさしい視点が魅力で、読むと心が落ち着く。

こぶたのピクルス

 

こぶたのピクルス (福音館創作童話シリーズ)

こぶたのピクルス (福音館創作童話シリーズ)

 

 小風さち氏は、わにわにシリーズが魅力的だが。こちらのシリーズは、ていねいにまとめているが展開は、ちょっと大人目線な気がした。登校の途中で、牛乳屋さんやパン屋さんの配達の忘れ物を届けてあげるが、自分が学校に行くのを忘れてしまった! などというのは、大人目線だとかわいいけど、当人はけっこうショックだし、読んでいる子も、真剣に読んだらかなり心配だと思う。海に行く前夜にはしゃぐ姿なども、子どもアルアルだが、なんとなくそこで終わっているようで物足りなかった。

エジプトの少年

M.マチエ作 岩波少年文庫 1966 

 

ソ連(当時)の考古学者による古代エジプトの少年セティの一日を描いた作品。セティは富裕な階級に属するエジプトの少年。いたずら好きだが、素直で正義感に富んでいる。学校でえこひいきをする先生への反発。はじめてパピルスを使って書く不安。貧乏な子と友人になったことで社会の不正を知り「なぜ貧乏人が苦しむの?」とアニ老人に訴えます。これは古代エジプト版『君たちはどう生きるか』でしょうか?インテリと下層階級が目に見える形では存在しない現代っ子はどう見るか?

海と十字架

 

海と十字架 (偕成社文庫 (3111))

海と十字架 (偕成社文庫 (3111))

 

 戦国時代が終わり、キリシタン禁制が始まった時代を背景に少年たちの生き方を追う時代小説。孤児で下人(奴隷)として働いていた伊太と弥吉は、逃げ出して大阪行きの船に密航したつもりでマカオに行きの船に乗り込む。そこで店をまかされている小鉄に助けられ、日本人修道士の少年マチアスとも出会う。だが、伊吉は家族が殉教した過去を持ち、キリスト教に激しい反発を感じているが、彼の穏やかな性格に感化される。帰国した弥吉は店の小僧として元気に働くが、伊吉は、小鉄を陥れて殺した船乗りの黒市に恨みを募らせる、しかし実際に黒市を追い詰めたとき、なぜかマチアスが止める姿を見て殺せない。その後マチアスは、東北に流されたキリシタンを資金援助ため密かにに来日し、伊吉はそれをサポートする。人は良いが小心でお金の援助はするものの、直接的ではないにしろ密告に近いことをしてしまう弥吉、一時は自信を失うものの、さいごまで日本のキリシタンと共にいることを選ぶマチアス、激しくまっすぐに生きる伊吉と、それぞれの生き方が魅力。

太陽と月の大地

 

太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)

太陽と月の大地 (世界傑作童話シリーズ)

 

 スペイン南部グラナダイスラム教から国土を取り戻すコンキスタによって、支配下に置かれたイスラム教徒への締め付けは、徐々に激しくなる。最初はモーロと呼ばれ信仰が許されていたが、次には改宗を迫られモリスコとなり、ついに追放を迫られる。長年の共存の中で、宗教の違いを超えた友情が代々はぐくまれ、伯爵家とその領地に住む農場のモリスコたちは親しく付き合っていた。伯爵家の令嬢マリアは、明るく元気な少女で、モリスコのエルナンドと特に親しくなるが、エルナンドの兄は、市場でモリスコの娘に手を出した貴族の若者を襲い、お尋ね者となって山賊に身を投じる。迫害に抵抗しようとしたモリスコたちは、独自の王を立てるも街の略奪に走るものもあり、敗北して全員が奴隷か追放となる。エルナンドと父については、伯爵が奴隷として買い受けるが、二人は自由を求め、グラナダを去ってアフリカにわたる。16世紀の悲劇的な事件を引き裂かれた友情と愛で描く。こうしたことがなぜ起こったのか、正直もっと知りたい。

はいちーず

 

はいちーず

はいちーず

 

 写真をとるので「はい ちーず」といってにっこり笑う絵本。その繰り返しだけで、読んでもらえば、それなりに幼児は喜ぶだろうが、この程度なら絵本が必要か?ふつうの語りかけで十分と思う。

わたしのねこカモフラージュ

 

わたしのねこカモフラージュ

わたしのねこカモフラージュ

 

 両親が別居し、母と共に新しい街に越してきたルース。気分屋の母親に、口うるさい大家、転校生ということで孤立する学校生活。行き詰まった暮らしの中で、ルースは、不思議な毛並みのネコ、カモフラージュと出会う。そして、カモフラージュを通じて、マイケル少年と老婦人ミス・バーナビーと出会う。ルースの導師となるミス・バーナビーがとても魅力的。ラストは大円団過ぎるかもしれないが! 作者の手による挿絵が、とてもよくあっていて魅力。