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児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

吉四六さんとごさくどん

 

吉四六さんとごさくどん (おもしろとんち話 (2))

吉四六さんとごさくどん (おもしろとんち話 (2))

 

 とんち話のシリーズで、子どもたちにもよく利用されている。物語は、できごとがポンポンと進み、気軽に読みやすい。頭の回転が良く、ほかの人を出し抜くのに、なんとなく憎めない。「山をもってくる」では、村人にけしかけられ、山をもってくると言い切って、どうするのかと思いきや、山をもってくるのに邪魔だからと言って、村の家に火をつけようとしてあわてて止められます。一休さんの虎退治みたいなものですが、陥れようとしたものの盲点をつくのはとんちの醍醐味!

へたなんよ

 

へたなんよ

へたなんよ

 

 耳が遠いから電話がへた、そして目が見えにくくて、針に糸をとおすのがへたなおばあちゃん。いつもわたしが手伝ってあげる。でもわたしにもへたなことがある。クラスメートのへたと、上手をみて、上手なところを素直にほめる主人公。いかにも、な内容があざとくならないのは、主人公の女の子の素直さが前面に出ているからと感じる。宮川ひろみたいな感じの作品。

あたまがよくなる図鑑

 

あたまがよくなる! 図鑑 (学研の図鑑 for Kids)

あたまがよくなる! 図鑑 (学研の図鑑 for Kids)

 

 内容は、迷路だの探し絵だのゲームブック。あやとりだのなわとびを見開きに入れ、何を買っていいかわからない祖父母あたりをターゲットにして、新年度に合わせて出た感じ。分厚いのに2,500円と価格を抑えて、プレゼントとして買わせる作戦風。それなりに迷路とか楽しむかもしれないが、それだけ!?

小さな男の子の旅

 

小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ)

小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ)

 

 「小さな男の子の旅」病気のお母さんのもとに、治療費を持って向かう男の子の物語。周りの大人たちに同情を寄せられているが、十分に深刻さを理解していない男の子が、病院ですっかり感じが変わって眠る母親を見てひそかに泣くようすはシリアス。もう一つの「おかあさんがふたり」は、二人目のおかあさんに納得がいかないリスベートと継母の物語。前のお母さんのお墓の前にいるリスベートに対し、継母が自分も母親がいなくてさびしかったこと、年ごろになっても誰も結婚してくれなくてさびしかったこと、「あたしもひとりぼっち」と率直に語って理解しあう様子は、今見てもすごい。二作ともケストナー初期作とのことだが、子どもへの十分な説得力があると思う。

父さんの納屋

 

父さんの納屋

父さんの納屋

 

 開拓時代のアメリカ。9歳のベンは、優秀だったため寄宿学校に行かせてもらっていたが、父が倒れたことで呼び戻される。母はすでになく、兄のハリソンと姉のネティが農場を守っていた。寝たきりで言葉もしゃべれず、食事をさせるのも難しく、排せつも垂れ流し。ベンは、そんな父の姿にショックを受けるが、介護をしている中で、父にまばたきで合図してもらうことで、父に思考力が残っていることに気づく。父の喜ぶことをして元気を取り戻してほしい。父がいつも望んでいた納屋を建てることで元気を取り戻してもらおうと考える。実直な兄、16歳でもうすぐ結婚するつもりの勝気な姉。二人を説得して納屋づくりを進めるが、父は徐々に弱り、ついに完成の日に死んでしまう。ラストは、50年後、その父の納屋がまだ立っていることをベンが語って終わる。ベンの一途さは確かに感動的だが、介護の大変さはあまり触れられず、ベンは結局勉強をやめて兄と農業やったの?とかもしりたいけどわからず、なんとなく欲求不満が残る。

りゅうおうさまのたからもの

 

りゅうおうさまのたからもの (世界傑作絵本シリーズ)

りゅうおうさまのたからもの (世界傑作絵本シリーズ)

 

 モンゴル出身の画家と作者による、色彩鮮やかな絵本。兄はなまけものだが、弟は働き者の兄弟がいた。ある日、弟は鳥に食べられそうになっていた魚を助けると、魚は竜王の娘だった。竜王からお礼に金色の「水の箱」をもらう。決して開けてはいけないといわれるが、その箱を枕に眠ると大地には水が豊かに流れる。だが、欲張りな兄は、箱の中に宝物があると考えて開けてしまうと、大水ですべてが流され、後には水がなくなってしまった。弟は、竜王に許してもらいに出かけ、途中でカエルとヘビを助ける。竜王から三つの謎を出されるが、弟は、カエルたちに助けられて、もう一度宝をとりもどし、竜王の娘と幸せに暮らす。定型的なむかしばなしだが、素直に楽しめてよい。

スマート キーラン・ウッズの事件簿

 

スマート: キーラン・ウッズの事件簿

スマート: キーラン・ウッズの事件簿

 

 主人公キーランは、はっきりかいていないが、たぶんアスペルガー症候群の男の子。特別支援学級で指導を受けて、まじめに社会の中で生きていこうとしている。だが、彼と母に暴力を振るう義父と、やはり乱暴な義兄がいる家庭で、辛い思いをすることも多い。ある日、知っていたホームレスのコリンさんの死体をみつける。そのそばでは、コリンさんと親しかったホームレスのジーンさんが悲嘆にくれていた。キーランは殺人事件だと思うが、警察は酔ったホームレスが川に落ちただけだと相手にしてくれない。彼が得意なのは、絵を描くこと。ジーンさんがコリンさんと言い争っていたという人のスケッチや、現場のスケッチを描き、自分なりに捜査を続ける。そして、かつては交流があったのに、母親が義父トニーと暮らし始めたことで交流が途絶えてしまった祖母にも会いに行こうとする。自分なりに、少しづつ考えながら前に進む姿は、とても魅力的。最近、こうした訓練で社会性を身に着けたり、まわりの世界を理解しようとする主人公が活躍する作品が増えているが、ひょっとすると、これは、現実に社会性がなくなってきた読者にその方が納得しやすいから? もしくは、そうしたひたむきさはアスペルガーでなければ表現できないから? 物語は、事件の解決と暴力を振るう義父が薬物売買で逮捕されることでハッピーエンドを迎える。ふと、ここで気付く。いわゆる「イワンの馬鹿」のような昔話の主人公の愚かさと素朴さが一体となったキャラが、現代のアスペルガー症候群の主人公なのかも。