児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

カレジの決断

 

カレジの決断

カレジの決断

 

 伝統的なアーミッシュの家に生まれたカレジは、周囲の人と同じようにできない自分への不安を感じている。女の子なのに家事が苦手で勉強好き、弱く生まれついた弟を助けたくて「神の思召し」という考えにも同意できない。ついに家を離れて叔父のところから学校に通う決意をする。伝統的な生活に疑問を持ち、自立しようとするやむにやまれぬ少女の思いがある。ただ、人はそれぞれで、『アーミッシュに生まれてよかった』(ミルドレッド・ジョーダン作、評論社、1992年)という本もあるので、アーミッシュに偏見は持たないでほしい。

わたしも水着をきてみたい

 

わたしも水着をきてみたい

わたしも水着をきてみたい

 

 ファドマはソマリアからスウェーデンに来たイスラム教の女の子だ。この国は、ソマリアとはいろんなことが違う。ファドマが身に着けているヒジャブというスカーフをつけてる子はいないし、プールの日には、男の子と女の子が水着で一緒にプールに入っている。プールは、とても気持ちよさそう。でも、男の子と一緒にあんなに素肌をさらして泳ぐなんて考えられない。お父さんやお母さんだって許してくれない! 一人で更衣室に戻ったら水着があった。思わず着てしまい、先生に見つかるがそれは、水着を忘れた子用のもので叱られなかった。先生は、家に手紙を書いてくれる。お母さんも一緒に、女性だけのプールに来ないか? という内容だった。とても行きたいけど、お母さんはお父さんに聞いてみると言っただけ。うれしいことに、女性だけのプールなら良いとお父さんも言ってくれた。初めてのプールをファドマは存分に楽しんだ、そして帰り道、お母さんも自分の夢を教えてくれる。それは自転車に乗ってみたいということだった。全く違う文化の中での戸惑い。それを「おかしい」と言って批判するのではなく、そうした人たちが受け入れ可能な条件を整えて案内するスウェーデンという国の姿勢をとても魅力的に感じた。

きゅうりの下であいましょう

 

 

きゅうりの下であいましょう (文研ブックランド)

きゅうりの下であいましょう (文研ブックランド)

 

 いなかに住むネズミのアダムは、町のネズミアマンダと文通を始めた。アマンダは、アダムを誕生日に招待してくれるが、アダムは町がちょっぴり怖い。けれども思い切って行ってみると・・・。互いの思い込みと、それを乗り越えていく姿がよい。

もりのへなそうる

 

もりのへなそうる (福音館創作童話シリーズ)

もりのへなそうる (福音館創作童話シリーズ)

 

 先日「てつたとみつやの本はどこ?」とカウンターに来た男の子の兄弟がいた。おにいちゃんは6~7歳、弟は3~4歳位。一瞬、何のだろう?とおもった時、下の男の子がすごくうれしそうに「たがもの本!」といってくれたので、ああ、この本だ!とすぐわかりました。その兄弟がてつたとみつやに見えて、とても楽しくなりました。そう、これは「たがもの本」なのです。森で見つけた巨大な卵、でもみつやくんは、小さいのでたまご、といえずたまもと言うのですが、これで一挙に、この卵が、特別な卵になった気がします。次の日、森に行くと、卵はなくて、恐竜にちょっとにている“へなそうる”がいるのです。二人とへなそうるの冒険と、楽しい言葉遊びの世界は、絵本から物語にうつる年齢のこどもたちに、ぴったり。

なんにもせんにん

 

なんにもせんにん (チューリップえほんシリーズ)

なんにもせんにん (チューリップえほんシリーズ)

 

 怠け者の男が、小さな男が入ったつぼを拾う。小さな男は、自分は「なんにもせんにん」で、怠け者が大好きだから一緒に連れていってくれと言った。怠け者が外で遊んで帰ると、小さな男は大きくなっていた。遊んでいると日に日に大きくなったが、たまたま稲刈りを頼まれて、渋々ながらも手伝うと、お礼がもらえて、ちょっとご機嫌に! そして家に帰ると大きくなった男が縮んでいた。そのまま怠け者が毎日働くと、男は小さくなってつぼに入り、捨ててくれと頼んできたとさ、というお話。小さい男がどんどん大きくなるところが楽しいが、カバー見返しに「働くことは喜び」なんていう解説がついています。コレ、余計では?

鏡 ゴースト・ストーリーズ

 

鏡―ゴースト・ストーリーズ

鏡―ゴースト・ストーリーズ

 

 「幽霊の話」スーザン・クーパー作:気難しく冷酷な父を恨んで死んだ少年の霊が、コンピュータを通じてはなしかけてきた。霊は、テニスで僕を僕の父さんに勝たせようとする。父さんは、テニスとなると子どもみたいにムキになる。そしてついに父さんに勝った日・・・。「鏡」角野栄子作:古道具屋で買った鏡に取り込まれる恐怖。「首筋におかれた指」マーガレット・マーヒー作:母さんとイヴォールは、かっこいい暮らしにあこがれている。でもひいおばあちゃんはそんな母さんに批判的。お金があるのに援助してくれないおばあちゃんの車イスをイヴォールは桟橋から突き落とす! 「山」チャールズ・ムンゴシ作:山を越えて出かけようとする僕らが体験する恐怖。
異なる著者による、それぞれの味わいがある短編集。

安寿姫草紙

 

安寿姫草紙 (ノベルズ・エクスプレス)

安寿姫草紙 (ノベルズ・エクスプレス)

 

 山椒太夫の物語をモチーフとした作品だが、ファンタジーとも歴史小説ともいえない。表紙がかわいらしいが、内容展開が微妙。物語の発端は安寿の父、正氏が子狐を殺した祟りが発端となっている。正氏の性格は、剛毅で不合理が嫌いということになっているが、直に狐の霊と対峙してるのに霊を認めないのか? また、領民のカウンセラー的な善良な霊能力者を霊能力者というだけで嫌って殺したりするなど、見識が狭い問題のある男、と思う。奥方の伊与も、明るく賢気なのに、讒言でコロっとだまされる。安寿の鬱屈と、岩木山で山姥のような女性に会ったことによる生き方の変化は、全編の中では説得力があるが、ここで会う狼のエピソードはここで終了し、あとの展開とは関係がない。正氏の悪行のため、安寿が犠牲になる物語という因果応報譚という展開に感じられてスッキリしなかった。