児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

おてんばシーラ

 

おてんばシーラ (世界の絵本ライブラリー)

おてんばシーラ (世界の絵本ライブラリー)

 

 暗いところも、お化けも、犬だって怖くない勇敢なお姉さんシーラ。妹のルイーズは、いつもお姉ちゃんってすごい、と思っています。ところがある日、いつもと違うルートで家に帰ろうとしたシーラは迷子になってしまいました! 元気いっぱいのシーラのようすが、妹のルイーズのちょっと尊敬を込めた視点で描かれている。オチは、早々に読めてしまうが、絵と文章が一体化した元気な雰囲気は子どもの共感をよびそう。

ドルジェのたび チベットの少年のはなし

 

ドルジェのたび―チベットの少年のはなし

ドルジェのたび―チベットの少年のはなし

 

チベットに住むドルジェは、おくびょうだというので友だちからバカにされている。そんな時、お寺から降りてきたおじさんがラサへ巡礼の旅に行く途中で訪ねてきた。ドルジェは自分も一緒に行きたいとお願いして両親も許してくれた。だが、ラサは180日もかかるという遠い地。岩場や悪天候に後悔しながらも、ドルジェはおじさんと共に進みます。川を渡り、高原を越え、デェモという大きな熊にも遭遇しますが、ついに173日目、ラサにたどりつきます。途中の壮大な自然の雰囲気が良く出ていて、いっしょに冒険の旅に出ているような気持ちになる。文字数が多いので、よみきかせに使うなら高学年対象で、時間に余裕がある状況がのぞましいだろう。 

ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

 

ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

ラッグズ! ぼくらはいつもいっしょだ

  • 作者: レジョナルド・オトリー,クライド・ピアソン,倉本護
  • 出版社/メーカー: 大日本図書
  • 発売日: 1976/01
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る
 

 オーストラリアの砂丘に近い農場で少年が、ベテランの猟師であるカンガが王さま犬を育てるために、生まれた七匹の犬の中からたった一匹を選び出し、後は殺してしまうという非情なシーンから物語が始まる。少年は、母犬ブロルガとたった一匹残った子犬ラッグズに夢中になって世話をする。どんな仕事でも手際よくこなし、少年が毒ムカデ二にかまれて苦しむとすぐ的確な処置をしてくれるカンガは、無口だが少年にとってはあこがれの存在だ(精霊の守り人でいえばジグロ!?)。農場には、食事の世話をしてくれるジョウンズ夫人、牛の面倒をみるロブやアボリジニ(本では原住民)がいるが、少年はみんなを尊敬し、まじめに働く少年をみんな目をかけてかわいがっている。子牛への焼き印つけ、すさまじい砂嵐などさまざまな体験を少年は真正面から受け止めて成長する。だが、カンガは母犬ブロルガを狩りに連れていくため少年から奪う。わかっていたことだが、少年の悲哀は深い。そして、どうしてもラッグズだけは渡したくなくて、ついに農場を飛び出してしまう。
少年の生い立ちについては何も描かれていないが、明らかに少年に家族の影はない。だが、犬を愛し、自然を愛し、仕事を愛し、周囲の大人たちを尊敬して成長していくさまが何とも魅力的な成長物語。

風と行く者 守り人外伝

 

タルシュ帝国との戦いが終わり、人々は荒廃の中から立ち直ろうとしていた。タンダと共に市に行ったバルサは、盗人の嫌疑をかけられ窮地に陥っていた旅芸人サダン・タラム(風の楽人)を助け、バルサは彼らの護衛士になる。一行を率いる長エオナは19歳の若い娘だが、バルサはかつてエオナの母サリにジグロと共に雇われて執拗な暗殺者の手を逃れた経験があった。当時のバルサは16歳、未熟な自分にイライラしながらあがいていた。過去の旅と、今回の旅が重なり、森の王の谷間に隠された秘密がその背後にあることが徐々に明らかになっていく。上橋氏らしく、背景にはロタとターサという二つの士族の対立。不遇のためにますます誇りに執着して自分の身を亡ぼすような選択をする愚かしさと、民の平和のために双方の誇りを保った和解を進めようとする賢明さが共に描かれる。今回はいつもストイックなジグロにもロマンスがあったこともわかってちょっとうれしい! 

サーカスは夜の森で

 

サーカスは夜の森で (あかね世界の文学シリーズ)

サーカスは夜の森で (あかね世界の文学シリーズ)

 

 不況のあおりでサーカスが解散。サーカスで育ったベルとチャーリーは、叔母のところから学校に通うことになり、ベルの両親はアメリカのサーカスで働くことになった。チャーリーの両親は交通事故で亡くなりベルの両親に引き取られたのだが、勝ち気で美しいサーカスのスターだったベルはチャーリーのあこがれだった。だが、ベルは禁止されていた高所の綱渡りに勝手にチャレンジして足を滑らせた。なんとかしがみついたベルをチャーリーは救うが、ベルは美しい顔を切ってしまい、恐怖で芸ができなくなってしまう。学校がはじまるまで農場で過ごすことになった二人と象使いマーフィーさんと老いた象テシー。マーフィーさんが病気で倒れ、引き取り手のないテシーは、ペット用の飼料加工工場に送られることになった。テシーを助けたい。沈んでいたベルの思いに火が付く。なんとかサファリパークね象を連れていってもぐりこませれようという無謀な計画を建てチャーリーは巻き込まれていく。周到な計画。だが、なにしろ目立つ象を連れての逃避行は困難の連続となる。冒頭とラストに同じシーンを置くなど巧みな構成がされており、またテシーのために動き出したことで、ベルが成長する様子も自然で魅力的に描かれている。多少出来過ぎのところがありつつも、森の中で出会ったアウト・ローを自称していた少年たちの行き場のなさの現実感が余韻となっているところがいい。

青い花のじゅうたん

 

青い花のじゅうたん―テキサス州のむかしばなし (児童図書館・絵本の部屋)

青い花のじゅうたん―テキサス州のむかしばなし (児童図書館・絵本の部屋)

 

 先住民族コマンチ族に伝わるテキサス州のむかしばなし。春になっても雨が降らず、このままでは飢きんがくると恐れた村人が祈ると、一番大切なものを燃やして、その灰を大地の四つの方がく、風が生まれるところにまくようお告げがある。みんなは感謝しながらも、自分が大切にしているものは違うだろうと語り合った。この村には飢饉で家族が死んだ〈ひとりでいる子)と呼ばれる女の子がいた。女の子は母親が縫ってくれ、父親が青い羽根をつけてくれた形見の戦士の人形を大切にしていたが、お告げを聞くとその大切な人形を捧げ、燃やして灰をまいた。すると灰をまいた場所に美しい青い花が咲き、雨が降った。みんなはその子を〈みんなをたいせつにする子〉と呼ぶようになり、今でもそこには青い花が咲く。素朴な昔話だが、デパオラの様式的な絵のタッチが内容にあっていて素直に楽しめる。

ケルトの白馬

 

ケルトの白馬

ケルトの白馬

 

 ケルトの丘に今なお残る白馬の伝説として描かれている。イケニ族の族長の息子ルブリンは、兄弟の中で一人だけ先祖返りの先住民似の容貌を持ち、ものの形に心惹かれる情感の持ち主だ。ある日アトレバーティス族が攻めてきて、ルブリンの部族は破れた。唯一残った族長の息子として、ルブリンは敵のリーダークラドックとの交渉に辺り、妹の夫で傷を負った次期族長のダラを守ろうとする。自分の部族の自由の代償として大きな白馬を描くことを命じられた時、ルブリンは引き受け、その絵に命を与えるために神への犠牲として自らの命を犠牲にする決意を固める。
父親がルブリンの資質を見出す瞬間、ダラとルブリンの間に友情が芽生える瞬間を信じられないほど鮮やかに描くところに、サトクリフの底力を感じる。