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どろぼうのどろぼん

 

どろぼうのどろぼん (福音館創作童話シリーズ)

どろぼうのどろぼん (福音館創作童話シリーズ)

 

 警察官のぼくが声をかけた男は、自分は泥棒だといって素直に署に同行された、だが、取り調べ室での彼の自供は不思議なものだった。自分には、盗まれたがっている物の声が聞こえる。そして、それは必ず盗んでもだれも気付かないものなのだと。だからだれも盗まれたことに気付かない。被害届も出さない。たまってしまった盗んだものは、最初はフリーマーケットで、次は故売屋に売るようになった。工場を渡り歩いて働きながら、盗みを続けていたある日、どろぼんは犬を盗んでしまう。傷つき、飢えた子犬を見つけ「よぞら」と名付けてかわいがる。だが、本当の持ち主に偶然出会い、子犬を手放す。警察官のぼくたちは、どろぼんの話に魅了され、しかも、誰も被害さえ気づかないという事態に、事件性を見つけられない。そしてどろぼんは、話の中で、子犬を救わなければいけないことに気付き、ぼくたちはそれを助けることを決意する。忘れられ、盗まれた方が良いものを盗む完全犯罪という発想は面白いが、稼いだお金をどう使ったのか? 子犬の声を聴いたことで、物の声を聴く力をなくしたのか?が中途半場なのが残念。