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ゴースト・ボーイズ ぼくが十二歳で死んだわけ

 

ジェロームの家ではみんな働いている。母さんはモーテルの受付、父さんは清掃員、おばあちゃんは家事で、ジェロームと妹のキムは、学校で一所懸命に勉強している。だけど、ちゃんと先生の話を聞いているってだけで同じクラスの不良に目をつけられる。なのに、いかにもイジメてくれといいたげな転校生のカルロスの味方になってしまった。不良にからまれた時、銃を取り出したカルロス。おかげで助かった、でもそれは実はオモチャの銃! そして銃で遊んでいるところを警官に撃たれて彼は死んだ。生きていた時と、死んでゴーストになったジェロームの話が交互に語られる。彼を撃った警官は不起訴になる。だが、警官の一人娘のセアラだけが、死んだ彼を見ることができた。それはなぜ? そしてジェロームのところには、同じくゴーストの男の子エメットが来る。1955年、北部から南部に遊びに来た黒人のエメットは、そこで店の白人女性に直接声をかけてガムを買い、お金を彼女の手のひらに乗せて渡した行為が、街の白人の逆鱗に触れてリンチされて殺されたが、だれも有罪にならなかった。ジェロームを殺した警官も無罪となる。黒人だというだけで延々と殺されてきた大勢の人間。そこには子どもたちもたくさんいる。どうしたらそれが変えられる? アメリカの物語ではあるが、日本にも根強くある差別のことを思うと、セアラのようにまっすぐに問題を見つめなくては、と思う。