児童書評価のページ

新刊・古典とりまぜて児童書を評価します

小さな男の子の旅

 

小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ)

小さな男の子の旅―ケストナー短編 (ショート・ストーリーズ)

 

 「小さな男の子の旅」病気のお母さんのもとに、治療費を持って向かう男の子の物語。周りの大人たちに同情を寄せられているが、十分に深刻さを理解していない男の子が、病院ですっかり感じが変わって眠る母親を見てひそかに泣くようすはシリアス。もう一つの「おかあさんがふたり」は、二人目のおかあさんに納得がいかないリスベートと継母の物語。前のお母さんのお墓の前にいるリスベートに対し、継母が自分も母親がいなくてさびしかったこと、年ごろになっても誰も結婚してくれなくてさびしかったこと、「あたしもひとりぼっち」と率直に語って理解しあう様子は、今見てもすごい。二作ともケストナー初期作とのことだが、子どもへの十分な説得力があると思う。